2022 Fiscal Year Annual Research Report
効果的な人事異動が特別支援教育における教師の専門性に及ぼす影響
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22J00139
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奈良 里紗 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / 教師教育 / 人事異動 / 教育行政 / 教師の専門性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は3つの研究から構成されている。本年度は初年度にあたり、第1研究に取り組んだ。 効果的な人事異動が特別支援教育の教師の専門性に及ぼす影響を明らかにするために、まず、特別支援教育の教師に求められる専門性とは何か、教師の評価方略、および、人事異動における利点と課題について、日本の大学で特別支援教育の教員養成に携わっている大学教員を対象に半構造化面接を実施した。 その結果の一部を World Congress on Special Needs Education:WCE-2022にて口頭発表したところ、その内容が評価され、Literacy Information and Computer Education Journalに掲載された。現行の人事異動制度における10項目の課題について明らかにすることができた。 また、私自身が弱視難聴という障害のある研究者という立場から、2022年7月15日~17日に名古屋で開催された視覚障害リハビリテーション研究発表大会にて分科会企画を立案・発表した(発表内容:新井千賀子・田中恵津子・渡邊純代・堀江智子・多田大介・奈良里紗・小田浩一(2022)ロービジョンを支えるお仕事いろいろ ~ミニミニレクチャー for ビギナーズ~. 第30回視覚障害リハビリテーション研究発表大会, 34.)。ここで発表した内容は、視覚リハビリテーション研究に掲載された(書誌情報:奈良里紗(2023)視覚障害当事者団体と専門家の連携による患者へのロービジョンケアの意義. 視覚リハビリテーション研究, 20-24.)。 このほか、2020年にイギリスを訪問した際に得られた視覚障害教育の教員養成に関するインタビューやリーズ大学における障害学生支援に関するインタビューなどを収録した「障害者という規範意識からの解放」という書籍を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は研究計画上、1年目にあたる。4月から5月にかけて、「効果的な人事異動が特別支援教育における教師の専門性に及ぼす影響」というテーマで研究倫理審査を受けた。6月から10月にかけて、第一研究となる調査研究を実施した。内容としては、国内で特別支援教育を専門とする大学教員47名に対して半構造化面接を行った。その結果の一部は、11月にオンラインで開催された国際学会( World Congress on Special Needs Education:WCE-2022)にて口頭発表を行った。12月からは、得られたデータの分析をプロジェクトチームを発足し、質的分析に取り組んでいる。
また、第二研究に取り組むための準備とフィールドワークをかねた調査を3月にイギリス(ロンドン・リーズ・バーミンガム)にて実施した。ロンドンでは、100年以上の歴史のある盲学校を視察したり、障害のある当事者家族へのインタビュー、現地の教員養成課程で学ぶ学生へのインタビューなどを行った。次に、障害学発祥の地であるリーズ大学を訪問し、本研究課題に対する助言をいただいた。最後に、バーミンガム大学を訪問した。この大学は、欧州最大規模の視覚障害・聴覚障害の教員養成大学として知られている。第二研究では、バーミンガム大学との共同研究に取り組む予定であるため、その研究の打ち合わせを行った。また、1年に1回開催される視覚障害教育の教員向け研修にも参加し、多くの示唆とネットワークの構築ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度中に、第一研究の研究成果を論文として海外誌に発表する予定である。具体的には、聴覚障害教育に関する教師の専門性の構造については、分析が終了し、投稿準備段階に入っている。これから、視覚障害教育、肢体不自由教育、知的障害教育について分析を行い、それぞれの研究成果を論文にまとめる予定である。 第二研究としては、教師の専門性の方略について検討するため、イギリスにある欧州最大規模の視覚障害教育の研究機関であるバーミンガム大学にて、国際共同研究を実施する予定である。そのために、第二研究に関する倫理申請を所属機関である東京大学にて実施した上で、9月から調査を開始できるように準備を行っている。9月から半年間、バーミンガム大学に国際客員研究員として所属をし、イギリスにおいて教員養成を担っている大学教員、視覚障害教育専門課程を修了した有資格者である教師、教員養成課程に在籍する学生、視覚障害児とその保護者に対する半抗争か面接による調査を実施する。加えて、ドイツ、オランダ、フランスなどの周辺各国における教師の評価方略について情報収集を行い、本研究の推進にあたり示唆を得たいと考えている。 第一研究および第二研究の結果を踏まえて、2024年度は日本の特別支援教育を担う教師5000人に対する大規模質問紙調査を実施する予定である。効果的にこうした調査を推進するために、バーミンガム大学にて研究を行っている間に、チューリッヒ工科大学でオンライン試験に関する調査研究を行っている研究チームとコンタクトをとり、情報収集を行う予定である。
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