2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J00527
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
劉 玲芳 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 花嫁衣裳 / 伝統 / ベール / 黒地の婚礼衣裳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、西洋文化が東アジアに影響を拡大している背景において、「儀礼」「技術」「東西文化の交流」という三つのアプローチから、東アジアの伝統服の実態、そして、伝統服から洋服への変容の過程を明らかにする。今年度は、研究計画書に書かれた通り、「東アジアの伝統服における改良の様相」について研究を行った。東アジアにおいて伝統服はいかに洋装化していったのか、その試みの実態を解明した。具体的には、東アジアの婚礼衣裳を中心に、主に花嫁衣裳における変化と洋風化について考察した。 まず、中国において女性の婚礼衣裳の一部として、ベールはどのように受容していたのかを明らかにするために、近代中国で刊行された女性雑誌の資料を調査した。研究の結果、1910から1930年代にかけて、文明結婚と集団結婚の新しい結婚形式の誕生と変化に伴い、花嫁衣裳において服装の変化とベールの受容の過程が明確になったことがわかった。 そして、「色の変化」と「花嫁イメージの変遷」という二つの視点から、日本の婚礼衣裳における洋風化を考察した。具体的には、20世紀前後における関連の文献資料や新聞・雑誌資料を用い、婚礼衣裳の色を中心に、とりわけ白と黒の関連性や変化の過程について考察した。また、婚礼陳列会と百貨店関連の資料、そしてビジュアル資料を収集し、近代的な花嫁のイメージの変化と変遷について考察した。 こうして、東アジアの伝統服における変化とその経緯をある程度明らかにした。東アジア人の晴れ着を改良する過程とその結果を比較することにより、日中間の大きな差異が出現した背景や原因を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通りに、1年目の「東アジアの伝統服における改良の様相」に関する研究を行った。具体的には、東アジアの花嫁の服飾(ベールと黒地の婚礼衣裳)に注目し、考察した。婚礼衣裳や喪服などの晴れ着は、近代の東アジアにおいて、種類から色、形など様々な方面で大きな変化が起きた。たとえば、長年にわたって東アジアで共通していた喪服の色が突然、白から黒にと変わったことが挙げられる。本年度は、伝統的な晴れ着における変化とその経緯をある程度明らかにした。こうした研究により、東アジアにおける伝統服からいかに洋服への移行、すなわち洋装化への試みの実態をある程度解明したと言えよう。 ただ、服装の改良に関しては、想定以上に多くの資料が存在するため、引き続き資料を収集し、整理して考察する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、2年目の研究計画書通りに進めていく予定である。まずは、昨年度に引き続き、服装改良に関して、東アジア人が服飾を改良する試みの様相を解明する。次に、洋装史研究で見落とされてきた洋装の周辺の文化や、東アジアでの受容例を丹念に検討する。また、東アジアの服飾文化全体に大きな変化をもたらした技術から見た服飾文化とはどのようなものなのか、日中両国の裁縫師の間にどのような交流、競争があったのか、詳細に検討する。これらの作業を通じて、東アジアの服飾文化における洋風化の発端を探しつつ、その変容過程の実態を明らかにする。 また、今年度はこれまでまとめた研究成果を論文(2、3本程度)の形で投稿し、国際シンポジウムや学会に参加し、口頭発表(2、3件程度)する予定である。
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