2023 Fiscal Year Research-status Report
集団意思決定における畏敬の念の「創発」的影響と機序の解明
Project/Area Number |
22KJ0740
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高野 了太 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 畏敬 / 集団意思決定 / 自然言語処理 / ナラティブ / トピックモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
ソーシャルメディアにおけるエコーチェンバー現象などの例をふまえると、「語り」が個人の認知過程、ひいては集合現象に果たす役割は重要である。本年度は、自然言語処理技術を用いて、以下の通りナラティブおよび畏敬に関する研究を並行して実施した。
ナラティブとは、様々な社会事象の背景にあるストーリーを共有することで、人々の認識が収束する現象を指す。ナラティブの生起メカニズムを明らかにするために、議論を通じて事件のストーリーを作り上げる「模擬陪審実験」を実施した。参加者は、時系列で事件を整理するストーリー条件、証人ごとに事件を整理する目撃者条件のいずれかに割り当てられ、同じ or 異なる条件の参加者と事件に関して議論した。議論の前後で事件を想起し、自由記述させることで、各参加者の知識表象やその変化を捉えた。主な結果として、以下のように新たな知見が得られつつあるー1. 同じ条件同士のペアにおいて議論後の自由記述の類似度が向上したこと、2. 議論に対する満足度、共有現実の感覚(shared reality)はストーリー条件同士において一貫して高いことが示された。得られた成果をワークショップ(Asian Advanced Workshop on Social Decision Making and Collective Intelligence)にて発表し、フィードバックを得た。また、フランス国立科学研究所(CNRS)のHugo Mercier博士とミーティングを行い、本研究について議論した。今後、追加分析を実施し、後続実験を行う予定である。
また、畏敬経験の「語り」がどのようなトピックから構成されるのか、各トピックが畏敬のどの主観的側面と関連するかを明らかにした研究を実施した。この研究に加え、昨年度まで実施していた研究成果をまとめた論文を執筆し、いくつか国際学術誌に正式に受理、公開された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、ナラティブの生起過程にかかわる新たな知見を見出した。また、過去の研究データに関する論文を執筆し、それらを学術誌に複数公刊している。さらに、後続の実験も計画中であり、今年度の研究活動の見通しがたっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り新たに見出した知見を発展させ、大規模言語モデルを活かした実験パラダイム(対話型AIなど)を開発し、ナラティブの生起過程に関するさらなる理解を目指す。
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Causes of Carryover |
フランス国立科学研究所(CNRS)にて、集団意思決定の専門家であるHugo Mercier博士とのミーティングを実施した。そのために生じる旅費で使い切る予定であったが、円安などにより正確にかかる費用が不透明であったため、結果として次年度使用額が発生した。この次年度使用額は、具体的に後続実験のために使用する。
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