2022 Fiscal Year Annual Research Report
光遺伝学を神経科学以外の生物学へと大きく拡張する鍵となる超長波長光受容体の発見
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22J01221
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 敬太 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 光遺伝学 / 光受容タンパク質 / 近赤外光 / メタゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
光遺伝学技術は、光によって活性化されるタンパク質分子を特定の細胞に発現させ、その活性分子の機能を光で制御することができる技術であり、現在、神経学分野で広く活用されています。しかし、既存の光活性化タンパク質は、組織深部への光透過性が低くかつ組織への光毒性が高い、短波長の青色光で制御される、という問題があります。 本研究では、光遺伝学技術を生物学全体に普及させるため、組織深部への透過が高く、組織への光毒性が低い、遠赤外から近赤外の長波長領域の光に注目し、その領域の光を感知する新規な光受容体シアノバクテリオクロム(CBCR)の発見を研究目的としています。当該年度では、2年目に予定している光受容体探索に使用するデータセットの作成を中心に行い、これまでに報告されている110種類のCBCR分子に関して、その結合色素種、感知波長領域、色素との結合効率、タンパク質のアミノ酸配列情報を収集し、まとめました。また、長波長感知光受容体は、長波長環境下という特徴的な環境におけるメタゲノム配列に分布していると推測し、特徴的な光環境に存在するDNA配列(メタゲノム情報)からの探索を行っていく。すでに特徴的な光環境の候補の1つである長野県中房温泉の微生物マットを採取し、DNA抽出と16sアンプリコン解析まで完了しています。これらの成果は、今後予定しているCBCR分子の特性を推定する予測機の構築や、その予測機を用いた特徴的な光環境中のDNA配列からの新規光受容体探索に取り組む上で重要な情報となります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度には、110種類の光受容体CBCR分子に関する情報を収集することができました。また、研究実施計画の段階では2年目に予定していた特異的な光環境の採取やDNA抽出を、すでに完了しています。このことから、今後行う予測機の開発や新規光受容体の探索に向けては、順調に進展していると考えられます。ただし、当初予定していたCBCRタンパク質の迅速かつ複数の精製が行える簡便な手法の条件検討については、未達成です。この点については、2年目に実施する予定です。以上の状況から、おおむね順調に進展していると評価できると判断しました。
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Strategy for Future Research Activity |
収集したCBCR分子の情報を用いて、以下の予測機の開発に取り組む。 任意の配列が光受容体かどうかを重回帰分析や機械学習などの手法を用いて予測機を開発する。次に感知波長を配列類似性や機械学習などの手法を用いて予測機を開発する。これらの予測機を用いて、メタゲノム配列を解析し長波長感知CBCR分子候補配列を予測する。さらにその配列を人工合成し、大腸菌での発現・精製を行い、スペクトル解析を実施する。これらの取り組みを通じて、より精度の高いCBCR分子の予測手法の確立や、新規CBCR分子の発見につなげていきます。
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