2022 Fiscal Year Annual Research Report
Non-Hermitian physics of heavy-fermion superconductors at exceptional points
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22J01230
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平良 敬乃 (TAIRA Takano) 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 非エルミート / 超伝導 / 量子力学 / ソリトン / マイスナー効果 / 量子開放系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究活動において、非エルミート物理を物性、数理物理、および量子基礎論への応用を提案した。 物性分野においては、交付申請書に記載された研究実施計画に従い、一般的な超伝導の記述に用いられるBCS模型を開放量子系の枠組みで解析した。結果として、例外点においてマイスナー効果が崩れることを理論的に示すことができた。この成果は、日本物理学会が創刊する学術雑誌PTEPに投稿済みであり、また京都大学基礎物理学研究所で開催された国際会議において口頭発表を行い、多くの研究者から質問やコメントを受けた。 数理物理分野においては、上記で解析した非エルミート模型に、場合によって複素ソリトン解が存在することがあるが、そのような複素ソリトン同士の散乱問題はまだ確立しておらず、数理物理の重要な分野の一つである。本研究ではModuli解析という手法を用いて、非エルミート系における複雑なソリトン同士の散乱を見つけることができた。この結果は、高エネルギー物理の専門学術雑誌であるJHEPに掲載され、さらに日本物理学会春大会で発表された。 量子基礎論においては、物性分野の研究中に開放量子系の重要性を認識し、非エルミート演算子が時間依存する場合があることがわかった。このような演算子に関する研究はまだ黎明期であるため、時間依存非エルミート量子力学に関する研究をイギリスの学術雑誌に掲載した。この研究は来年度以降の研究の基礎となる重要な成果であり、日本物理学会秋大会で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載された研究実施計画において、1年目では主に3つの目標を設定した:(1)磁性を持つ非エルミート模型の構築、(2)該当模型に例外点が存在するかの調査、(3)例外点でマイスナー効果が崩れるかの検証。今年度は、これらの目標を達成するため、一般的な超伝導の記述に用いられるBCS模型に外場を接続する新しい模型を提案した。また、開放量子系の枠組みを用いることで、非弾性散乱を利用した非エルミート模型の有効的な導出方法に限らず、非エルミート物理の特性をBCS模型にも応用できることが明らかになった。開放量子系における非エルミート物理の役割を深く理解するため、非エルミート量子基礎論に関する研究も同時進行で行った。さらに、BCS模型などに存在するソリトンの散乱問題が非エルミート系で解析できるかどうかを研究した。結果的に、今年度の予定であったマイスナー効果の研究の達成に加え、2つの基礎的な研究も完了することができた。これらの研究は、来年度以降の研究の基礎となる重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、交付申請書に記載した高次例外点の研究を、今年度の研究で発見した模型を3バンド構造に拡張することで実現できないか検討している。さらに、交付申請書で提案した動的平均場理論を利用した非エルミート性の有効的な導出方法よりも物理的な、開放量子系を利用した手法を中心に展開していく計画である。また、開放量子系のダイナミクスは解析のために近似を行いマルコフ発展を取るが、より一般的な非マルコフ発展に関しては非エルミート物理との明確な関連性がまだ見つかっていない。
この分野の基礎的な部分を開拓することで、物理的な系においても今年度の結果と類似した例外点近傍での特異な現象を解析できる可能性が高まると期待されます。
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