2023 Fiscal Year Research-status Report
Non-Hermitian physics of heavy-fermion superconductors at exceptional points
Project/Area Number |
22KJ0752
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平良 敬信 東京大学, 生産技術研究所, 研究員
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Keywords | 開放量子力学 / マルコフ / 非マルコフ |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書の研究目的は、重い電子系における例外点の役割でした。昨年、BCS理論によって説明される超伝導物質のダイナミクスがGKSL方程式で記述されるマルコフ・ダイナミクスと仮定した場合、例外点でマイスナー効果が破れることを示しました。研究実施計画では、これらの結果を重い電子系に拡張することでした。しかし、多体系がGKSL方程式で記述される場合は冷却原子系などに限られており、どの多体系でGKSL方程式が使用可能かはまだ議論が進んでいます。このため、昨年度の結果をそのまま重い電子系に応用するよりも、開放量子系の基礎的な理解を深めることが、より広範囲の物理系を解析する上で重要であると考えました。そのため、今年度は国内の共同研究者と協力し、シンプルなモデルでマルコフ性が現れる条件を調査しました。
我々は開放量子系においてハミルトニアンのスペクトルとマルコフ性の関連性に着目し、Massless Dirac粒子が従来のマルコフ近似を使用せずにマルコフ性を示すことを発見しました。さらに、環境のスペクトル構造と短時間・長時間でのマルコフ的なダイナミクスの関連性も明らかにしました。例えば、環境の高エネルギー領域の構造(エネルギーカットオフなど)は短時間領域で顕著に現れますが、長時間領域では低エネルギー構造(Diracギャップなど)によるダイナミクスの影響によって隠されることを示しました。
今回の研究の意義と重要性として、例えばこれまで解析が困難だった開放系において、環境系のエネルギー領域のスペクトル構造から短時間または長時間で限定的にマルコフ性が現れる場合、その限定的な時間領域で開放系を解析できると期待しています。さらに量子情報や量子光学の分野では、観測者や環境の構造を制御することも可能であるため、今回の結果を実験的に検証したり、応用することが期待されます。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに、交付申請書の研究目的である重い電子系における例外点の役割に関連する論文をジャーナルで出版しており、当該研究に関連する非エルミート量子力学の論文を3本出版しました。また、このような基礎的研究で得られた結果を数学のソリトンの分野に応用した論文を3本出版しました。今年度は、当初の研究目的の基礎部分となる開放量子系の研究を国内の共同研究者と開始し、現在は国内外の共同研究者と研究を進めています。これらのことから、当初の計画以上の成果が得られたと考えています。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、国内の研究者と進めている開放量子系の研究を継続し、他分野への応用も視野に入れて取り組みます。さらに、国外の研究者と連携して、日本国内ではニッチな研究分野に注力し、その結果を基に当該研究への新たなアプローチを検討します。また、今年度はすでに6回の国内・国際会議での研究発表を予定しており、これらの会議を通じて新たな共同研究を開始することに注力します。
|