2023 Fiscal Year Annual Research Report
プルーストにおける「個」と「普遍」の美学:死による愛する者の消滅という観点から
Project/Area Number |
22KJ0767
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 ゆり子 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 個と普遍 / セクシュアリティ / 喪 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は当初計画から想定外の発見があり、それを通じた研究の新たな展開を踏まえて、研究計画を修正した。 当初の計画は、以下の2つの作業を遂行することだった。①存在の個別性と言語の普遍性の間の対立という問題について、モダニズム文学におけるプルーストの位置付けを明確化する。具体的には、マルセル・プルーストの「個」と「普遍」の美学を、エズラ・パウンドやT・S・エリオット、T・H・ヒュームらの美学と比較する。②上述の研究成果について、a.国内での学会・研究会での発表を実施し、b.査読論文に投稿。 今年度、研究を進める中で、存在の個別性と言語の普遍性の間の対立という問題について、モダニズム文学の文脈では汲み取れないセクシュアリティの論点を発見し、研究計画を修正した。具体的には、A. 当初の計画通り、パウンドやT・S・エリオット、ヒュームらの美学の分析を推進していたが、それらとの比較対象となるプルーストの第一次大戦後の死生観の変化という観点のみから研究を進めると、プルーストにおける「個」と「普遍」の概念の性質を掴み損ねる恐れがあることに気づいた。B. この主題における他の先行研究を読み、別の切り口がないかを探求した。その中で、クィア批評によるプルースト読解や喪についての研究、とりわけセジウィックの『クローゼットの認識論』におけるプルースト論と「プルーストの天気」における『失われた時を求めて』中の喪の分析を検討することによって、上述の問題を回避しうると感じ、クィア批評の観点からプルーストの分析を行った。C. この分析を通じて、セクシュアリティや対象理論という新しい論点を発見することで、この欠陥を早期に克服するとともに、計画の時点では予想もしなかった方向への展開の萌芽を見出すことに成功した。
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Research Products
(2 results)