2022 Fiscal Year Annual Research Report
ストリゴラクトンの生合成経路の包括的解釈を志向した有機合成化学的研究
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22J10113
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩谷 七洋 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 天然物化学 / 植物ホルモン / 生合成経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストリゴラクトン(SL)は広範な植物から単離・構造決定されたテルペン類であり、アーバスキュラー菌根菌と植物の共生シグナルとしての作用や、植物の枝分かれ抑制作用などが報告されている。また、アフリカで甚大な農業被害を引き起こす根寄生雑草の種子発芽刺激活性物質としての機能も報告されている。すなわち、SLの代謝研究や構造活性研究などは、根寄生雑草の防除法開発に繋がる極めて重要な課題と捉えることができる。そこで申請者は、SLの生合成経路の大部分が未解明である点に着目し、独自の生合成仮説を提唱することで、それらを有機合成化学的に検証する研究を立案した。現在、研究対象としているSLは、zeapyranolactone(ZPL)、zealactone(ZL)、lotuslactone(LL)の3つである。2022年度は、ZPLおよびZLを研究対象としてきた。両天然有機化合物の生合成仮説は、その単離・構造決定の文献において言及されているものの、有機合成化学的に不可解な生合成中間体が提唱されている。そこから、申請者は化学的に矛盾のない生合成中間体を想定し、ZPL/ZLの独自の生合成仮説を提唱するに至った。そこで、その独自提唱している生合成中間体の化学合成に取り組み、そのものからフラスコ内でZPL/ZLが生成し得るかを検証することとした。しかしながら、当該の生合成中間体の化学合成が難航しており、複数の合成経路を検討しているところである。目的の中間体が合成でき次第、独自提唱するZPL/ZLの生合成仮説の妥当性を議論していこうと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
zeapyranolactone/zealactoneの仮想生合成中間体である7員環ラクトンの合成が完了していないからである。当初、過酸を利用したバイヤービリガー酸化によって、ケトンからラクトンを合成しようと試みたが、4置換オレフィンのエポキシ化が拮抗する結果となった。また、所望のエステルとアリルアルコールを分子内に有する基質から、7員環ラクトンを構築するより直截的な合成経路も検証したが、こちらも難航している。加えて、新規のクライゼン転位型の反応による7員環ラクトンの合成も検討しているが、中間体の不安定性や収率の低さなどが改善できていない状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、金属触媒を用いたカップリング反応によって、7員環ラクトン中間体の骨格構築を行う予定である。目的物を2つのユニットに分割し、7員環ラクトン部位とエノールエーテル部位の各ユニットとして設計し、それぞれを化学合成していく。その後、両ユニットを金属触媒によってカップリングすることで目的物を得る。現在は、7員環ラクトン部位の化学合成に取り組んでおり、短工程かつ高収率な合成経路の確立を目指している。
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