2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Genealogy of Ultraism in Hispanophone Modernist Poetry
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22J10322
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安原 瑛治 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | モダニズム / 環大西洋研究 / ラテンアメリカ文学 / ビセンテ・ウイドブロ / ホルヘ・ルイス・ボルヘス |
Outline of Annual Research Achievements |
7月には、前年度に投稿した論文 “'Un pequeno dios’ o ‘un maquinista atrasado’?: la trayectoria a Altazor de Vicente Huidobro”(「「ちいさな神」か「乗り遅れた機関士」か?―ビセンテ・ウイドブロ『アルタソール』への道」」)が学会誌『ラテンアメリカ研究年報』に掲載された。同論文では、1930年代のウイドブロ詩学の転機を論じており、本研究の出発点ともいえる内容となっている。 9月には、海外での資料調査を行った。米ピッツバーグ大学Hilman Libraryおよびヴァージニア大学Albert and Shirley Small Special Collections Libraryにて、アルゼンチンの詩人、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの手稿および関連資料をそれぞれ閲覧した。ボルヘスがウイドブロの美学を批判的に受容した1920年代の作品の原稿を閲覧し、その創作プロセスを理解することができた。 1月には、論文"El creacionismo y el nacionalismo en los primeros poemarios de Jorge Luis Borges "(「ボルヘス初期詩集における創造主義とナショナリズム」)が学会誌『HISPANICA』に掲載された。同論文は、ボルヘス美学におけるウイドブロの影響を論じたもので、9月の海外調査の理論的土台として位置づけられるものである。 3月には、ふたたび海外での調査を行った。チリ・カトリカ大学Biblioteca de Humanidades(人文学図書館)にて、ウイドブロの手稿および関連資料を閲覧した。いまだに校訂版の刊行されていない散文作品の原稿等を閲覧し、多様なジャンルにおける「創造主義」の展開を知るうえで貴重な資料を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前衛文学等のテーマ、そして個々の作家に応じた先行研究を収集し、それを消化することができた。資料調査では、ホルヘ・ルイス・ボルヘスとビセンテ・ウイドブロの原稿をそれぞれ閲覧し、本研究にとって重要な資料を得ることができた。また、本研究の仮説の根拠となる論文二本が学会誌の査読を通過した。これらの理由から、おおむね順調に研究は進展している。 ウイドブロとボルヘスの研究に時間を割いた一方で、もうひとりの重要な詩人、ヘラルド・ディエゴに関しては研究を深めることができなかった。これは2023年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
方法論の面では、分析の切り口の拡大を試みる。これまでは、主に芸術運動キュビスムとの同時代的な共振をウイドブロらスペイン語圏の詩人たちに見出すことを主眼としていた。しかし、研究を進めるなかで、「生気主義」と呼ばれる、19世紀末から20世紀初頭にかけて欧州で流行した思想潮流もまた有効な切り口になるうることが分かった。ウィリアム・ジェイムズ、フリードリヒ・ニーチェ、アンリ・ベルクソンに代表されるこの思想を本研究の三人の詩人たちがどのように受容したのかを検証する。 内容の面では、前年度に時間を割くことができなかったヘラルド・ディエゴ研究に着手する。彼に関するすでに集めた文献を消化し、それがいかに「超絶主義」ならびに西洋モダニズム全般の文脈に位置づけられるかを分析する。 研究活動の面では、6月にミシガン州立大学にて資料調査を行う。ボルヘスの手稿および関連資料を検討し、彼のウイドブロ受容に関する本研究の仮説をさらに発展させる。資料調査および先行研究の読解の成果をふまえ、ボルヘスとディエゴの「超絶主義」受容に関する学会発表を準備する。
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