2023 Fiscal Year Annual Research Report
スペイン語圏前衛詩における「超絶主義」の系譜―ビセンテ・ウイドブロを中心に―
Project/Area Number |
22KJ0774
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安原 瑛治 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | モダニズム / 環大西洋研究 / ラテンアメリカ / ビセンテ・ウイドブロ / ホルヘ・ルイス・ボルヘス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、まず、4-5月にかけて、アルゼンチンの詩人、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの作品を読解するとともに、入手した先行研究等関連資料を読み、1910-30年代の欧米圏モダニズム(前衛芸術)の重要な特徴であるキュビスムおよび生気主義への知見を深めながら、ボルヘスの作品をグローバルに位置づけることを試みた。 6月には、海外での資料調査を行った。6月13-16日、19-21日にかけて、米ミシガン州立大学Stephen O. Murray and Keelung Hong Special Collectionsにてボルヘスの手稿および関連資料をそれぞれ閲覧した。現行の全集には組み込まれていない初期作品、インタビュー記事、その他関連資料を閲覧し、前衛運動「超絶主義」をスペインからアルゼンチンに持ち込んだボルヘスの変遷を辿ることができた。 7-8月にかけて、前月の資料調査の結果を整理するとともに、あらたに関連資料を読み、20世紀初頭のグローバルな前衛美学に関する理解を深めた。また、前衛美学のトランスナショナルな伝播に関する先行研究を読み、それを活かしつつ、7月に、論文”Travelling Tradition: (Im)possibility of the Chilean Modernist Continuity of Huidobro, Parra and Bolano”を執筆した。同論文は、チリの詩人、ウイドブロが移民作家を含めた後続のチリの詩人たちに与えた影響を考察することで、彼の美学のトランスナショナルな流通を論じている。 研究期間全体を通じて、ウイドブロの唱導した前衛美学が、1910-30年代に、ボルヘスを介してアルゼンチンに流入した過程を分析することができた。また、「超絶主義」美学の独自性を検討するための着眼点として、同時代に世界的に流行した生気主義が有効であることがわかった。
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