2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ0777
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小正路 崚太郎 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 数理結晶化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子間距離に関する一連の拘束条件下で、対になった数理計画法を用いて結晶構造のプロトタイプを網羅探索する新しい方法を開発し、様々な酸化物の結晶構造を再現することができた。この方法は二つの最適化問題から構成される。一つ目は、全ての原子間に課される最小・最大距離の幾何学的拘束条件下での単位格子の最小化問題であり、二つ目は、化学結合数の最大化問題である。幾何学的拘束条件や化学結合数などの条件が、無機結晶化学で体系化された経験則を満たすような最適解の構成を可能にする。二つの問題を交互に解くことで幾何学的拘束条件を定期的に変化させ、全てのカチオンが所定の化学結合数を満たす構造を発見する。これは、アモルファスのシリコンに応用された、化学結合のネットワークを確率的に変化させる方法に類似している。不等式拘束条件の線形緩和が有効であることを発見し、小さな計算コストが大規模系の最適解の網羅探索が可能にする。18種類の組成に対して考案した数理計画問題を適用し、酸化物の結晶構造に対応する最適解をいくつも発見できた。さらに、計算結果は、数理計画問題の最適解の数は、第一原理計算で得られる全エネルギーの局所最適解の数に比べて格段に少ないことを示していた。少数の最適解は第一原理計算によって安定性を簡単に評価できるため、数理計画問題の網羅的探索は、未知の結晶構造から構成される革新材料の発見に繋がることが期待できる。 多様な酸化物結晶の再現は、ポーリング則を洗練したような普遍的なルールの存在を示唆している。有効な指導原理を発見することができれば、酸化物だけなく、カルコゲン化物や複合アニオン化合物、金属間化合物、ホウ化物といった様々な結晶構造探索に応用できることが期待できる。
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Research Products
(4 results)