2022 Fiscal Year Annual Research Report
有毒ヒラムシを用いたフグ毒テトロドトキシン産生・蓄積関連遺伝子の探索
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22J10627
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米澤 遼 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | テトロドトキシン / ヒラムシ / オミクス解析 / 免疫染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
ツノヒラムシ属のヒラムシ体内において、ヒラムシ単独もしくは共生細菌と連携して TTX が合成されていると考えられる。本研究では、これまで着目されていなかったヒラムシ類を用いて、TTX生合成機構の解明を最終目標に掲げて推進している。当該年度は、本研究目標の完遂に向けて、ヒラムシ体内のTTX生産における細菌の寄与の有無およびヒラムシ体内におけるTTXの局在の解明を目指した。まずヒラムシ体内におけるTTXの生産の可否、細菌の関与の有無を調べるため、抗生物質添加区・抗生物質非添加区・飼育開始前区の3試験区を用意して試験し、TTXの保有量をLC-MS/MS分析で比較した。その結果、TTXはヒラムシ体内で生産され、その生産にはある特定の細菌群が関与することが強く示唆された。また、TTX生産に関わる細菌群の候補を見出すため、アンプリコンメタゲノム解析を実施したところ、過去にTTX生産菌として報告されている分類群を含む 5属の細菌が候補となった。 ヒラムシ体内に高濃度のTTXが見出されることは明らかであったが、咽頭と卵巣を除く組織における詳細な局在は不明であった。本研究では、LC-MS/MS分析と抗TTX抗体を用いた免疫染色を併用し、多角的にTTXの局在を調べた。その結果、免疫組織化学染色では卵巣と基底膜でTTXの強いシグナルが得られ、他の多くの組織/臓器でもTTXのシグナルが得られた。一方、脳、貯精嚢および交接器ではシグナルは認められなかった。これらの結果は、免疫組織化学染色とLC-MS/MS分析を併用することで、基底膜に高濃度のTTXが蓄積されていること、咽頭部から分岐腸までの多くの組織・器官を占める柔組織にTTXが蓄積されていること、交接器などにはTTXを蓄積しないことを示す。これらの知見は、これまで不明であったヒラムシにおけるTTXの生合成機構解明に貢献するものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンプリコンメタゲノム解析によりヒラムシ体内におけるTTX生産に関わる細菌の候補を見出したことに加え、当該年度に候補となった細菌が、年度が異なる個体から検出されるかを確認するために個体数を増やし、再度飼育試験を実施している。 また、当該年度においてヒラムシ体内のTTXの詳細な局在部位を明らかにした。また、TTXに関わる因子を特定するには、TTXの活発な生産時期の特定が重要となってくる。そのため、当該年度は各種成長段階のヒラムシを飼育および野外採取によって取集することに注力した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒラムシ体内におけるTTXの生産および生産に関わる細菌の特定結果の再現性の確認および高精度な結果にすべく、試験に供する個体数を増やし再度飼育試験を実施しているため、昨年度候補となった細菌が存在するかを確認しつつ、再度TTXの生産に関与する候補の細菌を見出す。また、免疫染色を行うべく、各種成長段階のヒラムシ試料を既に集めているため、TTXの生産が活発な時期の特定を目指すとともにアンプリコンメタゲノム解析結果で候補となった細菌の局在部位の特定を目指す。 加えて、上記の実験結果を基に宿主と共生細菌のメタトランスクリプトーム解析を行う予定である。
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