2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J11404
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杜 雪菲 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 会計情報 / 合理的不注意 / 情報処理 / 情報処理キャパシティ / 情報選択 / 限定合理性 / 決算発表集中 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,株式投資家の情報処理に関する意思決定を解明することである。そのために,2022年度は,2つの研究プロジェクトを実施した。1つ目に,株式投資家の情報処理活動に関連する国内外の先行研究を包括的にサーベイした。具体的には,第1に,開示された投資情報が大量に存在し,投資家がそのすべてを処理できない中で,いかに価値の高い情報を選択して優先的に処理するのか,という意思決定の問題を考察した。第2に,投資家の情報選択が株価形成と企業行動に与える影響に関する実証研究を要約した。当該サーベイを通じて,既存研究から得られる実務上の示唆,および未解決の研究課題を体系的に示すことができた。その上で完成した論文は,2023年度中に『経済学論集』に公刊される予定である。 2つ目に,日本の株式投資家の情報処理意思決定に関する実証的証拠が極めて少ないことを受け,新たに実証研究を行った。大規模データを用いた実証分析の結果,上場企業の決算発表が集中し,投資家がすべての決算情報を処理することができない場合,相対的に事業の不確実性が高い企業から優先的に情報処理を行う,ということを明らかにした。当該研究成果は,企業の情報開示実務および証券市場の制度設計に対して,投資家の情報処理の観点から,有益な示唆を与えると期待できる。同時に,日本の株式市場において新たな分析手法を導入し,既存研究のギャップを埋めることで,関連する学術研究領域に対しても有益な貢献を有する。2022年に国内学会で報告を行い,2023年度中に論文として公刊できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の計画としては,2年間の間に,投資家の情報処理に関連する先行研究のサーベイを行った上で,実証分析を通じて,投資家の情報処理意思決定を段階的に解明することを目指していた。その中で,2022年度は,国内外の先行研究を対象とした包括的なサーベイを完成した。その上で,未解決の研究課題を発見し,実証研究の具体的な計画を定めることができた。その一部は,昨年度から分析の実施と論文の執筆に取り組み,2023年度中に成果を公表できる見込みであり,おおむね計画どおりに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,昨年度に開始した上記の実証分析の完成と成果の公表を目指す。その延長線上で,投資家の情報処理意思決定に関するより踏み込んだ実証分析を展開する予定である。具体的には,まず,上記の研究をさらに発展させ,投資家の情報処理と企業の不確実性の間の関係が,決算発表の前後など,時点間でどのように変化するのかを調査する予定である。また,現時点で制度の見直しの焦点となっている四半期開示について,そのインパクトを投資家の情報処理の観点から調査する予定である。本研究課題の成果発表を通じて,日本の株式投資家の情報処理に関する研究成果が少ない中で,当該領域における実証的証拠の蓄積に貢献し,そして企業の情報開示実務および関連する制度設計に対して新たな示唆を与えることを期待している。
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