2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ0801
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杜 雪菲 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 情報処理 / 情報選択 / 情報オーバーロード / 合理的不注意 / 情報処理キャパシティ / 決算発表集中 / 四半期開示 / 戦略的情報開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、株式投資家の情報処理に関する意思決定を解明することであった。そのために、2022年度にはまず、関連する領域の既存研究約200本を対象に、包括的なサーベイを実施した。独自のフレームワークで既存の研究成果を体系的に整理した上で、実務関係者と今後の研究者に対する示唆を分析・要約し、残されている研究課題を提示した。完成したサーベイ論文は、2022年に『経済学論集』に採択され、2024年3月に刊行された。 上記のサーベイ実施時に得られた課題意識のもとで、2023年度は、2つの実証研究を完成・発表した。1つ目は、企業の決算発表集中時の投資家の情報処理に関する分析で、その成果は論文として『現代ディスクロージャー研究』に公刊した。当該研究は、大規模データの分析を通じて、上場企業の決算発表が集中し,投資家がそのすべてを処理できない場合,相対的に事業の不確実性が高い企業から優先的に情報処理を行う,ということを明らかにしたものである。 2つ目の研究は、日本企業の四半期開示制度をめぐる議論に新たな知見を提供するために、共同研究に参加して、四半期情報に対する投資家の処理活動の活発さを定量的に検証したものである。四半期開示の任意化の是非をめぐっては、2020年から議論が続いている。しかし、重要な論点の1つである、投資家が実際に四半期情報をどの程度処理しているかに関しては、実証的証拠の蓄積が少ない。本研究では、投資家の情報処理をインターネット上の企業情報検索量で定量化し、四半期開示時に投資家の情報処理が通常時よりも高くなることを、複数の検証手法を用いて確認できた。本研究の成果は、共著論文として『會計』に掲載した。今後の制度設計に新たな示唆を与えるとともに、情報開示のインパクトを投資家の情報処理の観点から検証した、数少ない研究成果の中の1つとしては、学術的にも重要な意義を有する。
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