2022 Fiscal Year Annual Research Report
Evolutionary process toward endothermy in Dinosauria elucidated based on nasal structures
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22J11553
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多田 誠之郎 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 進化 / 恐竜 / 鼻腔 / 鳥類 / 双弓類 / 血管系 / 代謝 / 比較解剖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、恐竜類を中心とする双弓類において鼻腔の解剖学的特徴と機能を明らかにするとともに、化石記録を用いることでその進化過程を解明する。本年度は、恐竜類から鳥類への進化において起きた変化について議論をまとめるとともに、カメ類とワニ類について、現生種および化石種のデータ収集とそれらを用いた解析の一部を実施した。 恐竜類から鳥類への進化については、得られていたデータについて統計解析を行い、鼻腔の機能とその進化過程について検討を行った。その結果、体サイズで比較した場合ではなく、頭部サイズに対して内温動物が外温動物よりも大きな鼻腔を持つことが統計的に支持され、当初予想していた代謝状態ではなく、脳と鼻腔との間に生理学的関連性があると結論した。また、化石標本の観察を行って頭骨の内部構造の変化を追跡し、獣脚類から鳥類に至る過程で起きた頭骨変化の過程において鳥類様の鼻腔が獲得された時期を考察した。 カメ類については、特徴的な吻部の獲得に伴う鼻腔とその周辺組織の形態進化の解明に取り組み、本年度はその一例として血管系に着目した。複数の現生種標本について血管系への含ラテックスインジェクションを行って頭部血管系を記載し、他の現生双弓類と比較した。その結果、カメ類は他の双弓類同様に鼻腔で血液の温度調整を行っていることが解剖学的に示唆されたが、一方でその血管系は固有の配置パターンを有することが明らかになった。さらに、化石カメ類の標本調査を行ったところ、固有の血管パターンの起源はステムカメ類の早い段階まで遡ることが明らかになった。 ワニ類については、特徴的な扁平化した吻部の進化的起源とその要因を明らかにするため、今年度は成長段階の異なる現生種標本と偽顎類から現生ワニ類に至るまでの網羅的な化石種についてデータの収集を行った。現在はそれらのデータを用いた解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9カ月間のアメリカでの研究調査を通じ、現生種と化石種の標本について概ね十分な数の観察を行うことができた。また、獣脚類から鳥類に至る系統でおきた鼻腔の進化について議論をまとめ、投稿論文の形で報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、各分類群における吻部形態進化を明らかにするとともに、それらを踏まえ双弓類全体で吻部進化を俯瞰した議論を行う。恐竜類では、獣脚類以外の分類群で特に特徴的な鼻腔の進化がみられている。獣脚類で明らかにしたことを基準として、竜脚類および鳥盤類にみられる鼻腔の特殊化についても重点的に取り組んでいく。カメ類およびワニ類については現在までの方針を継続して研究を行う。カメ類では血管系以外の組織にも着目し、化石に残らない軟組織の変化を明らかにする。ワニ類では複数の解析を検討して最適な手法を選定し、進化の駆動要因とその時期の特定を行う。必要に応じて追加の化石記録調査を行い、より高い精度での推定を目指す。
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