2022 Fiscal Year Annual Research Report
数値シミュレーションと位置天文学観測データを用いた銀河動力学の研究
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22J11943
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
朝野 哲郎 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 銀河動力学 / N体シミュレーション / Gaia衛星 |
Outline of Annual Research Achievements |
欧州宇宙機関(ESA)の位置天文観測衛星Gaiaによって、天の川銀河の星の詳細な位置・速度空間(位相空間)分布が明らかになってきた。このような星の運動情報は、天の川銀河の現在の力学構造とその進化の歴史を解き明かすために非常に重要である。本研究では、Gaiaの観測データを読み解くために必要な天の川銀河の理論モデルを構築するため、大規模なN体シミュレーションを実行した。特に、射手座矮小銀河が天の川銀河円盤に与える影響に着目して研究を行った。天の川銀河・射手座矮小銀河を模した円盤銀河と矮小銀河の相互作用を50億体規模のN体シミュレーションで計算した。伴銀河については、観測的に推定されている射手座矮小銀河と同程度の質量のものとその10倍の質量のものの2パターンを試した。重い伴銀河による摂動では、母銀河円盤全体に振動を励起し、その振動のスナップショットがGaia衛星のデータから発見されたphase spiralとして観測されることを確かめた。また、bendingとbreathingという二つの振動モードが存在し、それぞれ異なるメカニズムで発生することを明らかにした。一方、軽い伴銀河による摂動では、太陽系近傍(銀河中心からの距離8kpc付近)ではphase spiralが見られず、phase spiralを発生させるためには射手座矮小銀河の質量が観測的推定値よりも大きくなければならないという先行研究で指摘されてきた問題の解決には至らなかった。ただし、母銀河の棒構造の端付近では、軽い伴銀河の近接遭遇直後にphase spiralが見られた。この発生メカニズムについては、伴銀河による外的摂動と棒構造による内的摂動との複合的な要因が考えられるが、より詳細な検証が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通り、天の川銀河+射手座矮小銀河の系のN体シミュレーションを実行した。本研究の問題設定に合わせてシミュレーションコードを一部改良するとともに、初期条件生成プログラムやデータ解析プログラムを作成した。計算が完了したモデルの数が予定よりも少ないが、既にシミュレーションコードや解析プログラムは用意できているため、今後、これらを利用して大規模かつ系統的にパラメータ探索を行なっていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きシミュレーションを継続する。これまで調べきれていない領域も含めて系統的にパラメータ探索を行っていく。また、解析的な理論モデルとシミュレーションとの比較を行い、銀河円盤の振動の励起・減衰の詳細な物理プロセスの理解を目指す。
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