2022 Fiscal Year Annual Research Report
近現代ロンドンの商業建築の発展に見る都市文化の解明
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22J11991
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 吉史 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 商業建築 / 百貨店 / イギリス / ロンドン / 火災保険地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「近現代ロンドンの商業建築の発展に見る都市文化の解明」を目的とし、主に百貨店を中心とした分析から分析を進めている。本年度は、1900年前後の都市の様子が網羅的に把握できるGoad火災保険地図の分析と現地での現存事例の調査を中心として、都市における商業建築の公共性や、地域的特質から生じる建築空間の差異について検討した。 「Goad火災保険地図」の性格との保存状況は以下のとおりである。Goad社は1875年に開業され、イギリスの主要都市、およびヨーロッパ、中南米、アフリカの一部地域にまでおよび火災保険地図を作成している。ロンドンにおいてGoad火保図は、シティ周辺は網羅的に地図が存在し、当時の郊外においても、火災の多かった工場・商業地区は地図が存在する場合が多い。地図には番地、階数、屋根形状、天窓、壁の種類、窓の大きさ・位置、防火戸、用途、各種防災設備が記載されている。そのため、建物形状の復元はかなり詳細まで可能と思われる。当史料は、、現在ほとんどの地図がBiritish Library に所蔵されており、原本は地図資料室にて閲覧が可能である。1900年前後で出版された第1版は網羅的に保存がなされているが、第2版以降は部分的にしか史料が存在しないため、通時的な地区の変化が分析できる箇所は限られる。 また、現地での事例においては、計8店舗の残存する百貨店建築を訪問し、開業当初からの改変/残存箇所などを把握することで、歴史的建造物となった百貨店建築の現在における利活用についても見識を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内においてデジタルアーカイブ上で閲覧のできる史料の状況をまとめ、分析した。また、新型コロナウイルス感染症に係る情勢の影響により、遅れていた現地での調査も再開され、計10日に渡るロンドンでの調査を通して、史料の収集と現存する建築事例への視察を始められた。 その結果として、研究計画上のポイントである、ロンドンの百貨店建築の分布と類型について考察を進めることができた。 以上の研究進行状況と成果を踏まえ、本研究課題において概ね順調な進展が認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においても引き続き同様の史料の分析を進め、現地における調査も行うことで、百貨店建築と都市との関係を分析・解明する予定である。加えて、ロンドンのみならず他の都市や他国の商業施設に関しても文献調査及びに、現地への視察をすることで、相対的な視点からロンドンの百貨店をとらえ直す予定である。 また、これらの成果を踏まえ、論文の執筆作業を進め発表することで、研究内容を広く共有し、商業建築の現代的なあり方に関しても視座を与えることを目論んでいる。
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