2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J12027
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 優太 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 合板 / 耐力壁 / 木造 / 小開口 / せん断性能 / 高耐力 |
Outline of Annual Research Achievements |
面材耐力壁の小開口は排気用のダクトまたはコンセントボックス、スイッチボックスなどを取り付けるために設けられる。現行の小開口の設置基準や補強方法は、実験的根拠に乏しく、さらに高耐力壁への適用性も不明である。中大規模木造建築物の増加に伴い、耐震要素への要求性能も増大したことから、各部材に発生する応力も大きくなるためより正確な耐力算定が必要である。そこで本研究では面材張り耐力壁のせん断性能に及ぼす小開口の影響の把握を目的に研究を進めている。現在までに、木造軸組工法住宅の許容応力度設計1)(以下グレー本)に記載されている小開口の設置基準の再検討を目的とし、9mm・12mm厚合板を用いた小開口付き合板張り耐力壁の面内せん断試験を行った。パラメータは壁の強さ(壁倍率)、開口位置、開口径(144mm,455mm)とした。結果は壁倍率が9倍を超えるような壁に対して開口を設けた際に明確に壁体性能が低下した。性能低下の主要因は開口隅部から生じる合板のせん断破壊であり、合板のせん断破壊が合板縁まで達すると荷重は急激に低下した。一方で、有開口仕様においても開口径が小さい場合や合板の位置により、合板のせん断破壊よりも釘接合部の破壊が先行する場合は、無開口と同様の性能もしくは補強効果により同等以上の性能を有することが確認された。開口位置については、開口端部から合板端部までの距離によって破壊性状が異なった。短い場合は、開口隅部から生じる亀裂が比較的早期に合板縁に達するものの、合板の損傷は少なく、開口補強材により軸組みにせん断力が伝達されたため、荷重は緩やかに上昇し続けていた。一方長い場合は、亀裂が合板縁までに達する時間を要するため、壁の変形は進むものの、亀裂が合板縁に達した後は合板の損傷が大きくなり、せん断破壊部がつぶれるようにしながら荷重を維持していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験的アプローチと解析的アプローチの両面から進めていく予定であったが、解析的アプローチが遅れている。一般的な壁モデルの作成には成功しているが、実験を経て確認された耐力推定の支配的要因である合板のせん断破壊を考慮可能である壁モデル作成が難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
解析モデルにおいて実験の応力状態を確認する。また現在合板のせん断破壊を考慮した耐力算定手法を考案中である。 剛性は文献より詳細計算法において開口付近の釘が効果を失うものとして釘の配列係数を変化させることで推定可能であることが示唆されている。そこで本研究では終局耐力の推定を試みている。終局耐力は、試験体のエネルギー吸収量を完全弾塑性置換することで算出される。そこで有開口耐力壁において、合板のせん断破壊開始後は荷重は頭打ちになり、変形によってのみエネルギーを吸収する、すなわち開口隅部に亀裂が生じた時の荷重を終局耐力と仮定する。そこで12mm厚合板のせん断強さτから下式によりせん断耐力τ_maxを算出する。 終局耐力の実験値と合板のせん断耐力が一致する仕様も見られたが、全体的には計算値を下回る結果となった。これは開口隅部への応力集中の影響と考えられ、今後の解析モデル等を通じて考察を深めていく
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Research Products
(3 results)