2022 Fiscal Year Annual Research Report
がん遺伝子DEKによるクロマチン構造への影響とその制御法の解明
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22J12495
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越後谷 健太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | がん / クロマチン / ヌクレオソーム / クライオ電子顕微鏡 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のゲノムDNAはクロマチン構造を形成し核内に収納されている。がん遺伝子タンパク質DEKはクロマチン結合因子でありさまざまな核内プロセスに関与しているが、どのようなメカニズムでクロマチンに結合し機能しているかは不明である。本研究では、クロマチンとDEKの複合体についてクライオ電子顕微鏡を用いて高分解能の構造解析を行い、DEKによるクロマチン結合のメカニズムを原子分解能で解明する。さらに、得られた構造をもとに生化学的解析を行い、DEKの結合がクロマチン構造に与える影響を解明する。 本年度はクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析を行った。この解析結果として、クロマチンの構成単位であるヌクレオソームとDEKの複合体の立体構造を高分解能で決定することに成功した。得られた立体構造から、ヌクレオソームのリンカーDNAと呼ばれるDNA部分にDEKが結合することと、DEKの結合によってヌクレオソームのリンカーDNAが特殊な配向を取ることを発見した。さらに、DEKのヌクレオソーム結合に重要だと思われるアミノ酸残基の候補を同定した。次年度はこれらのアミノ酸を変異させたDEKとヌクレオソームの結合試験を行う。 また、本研究ではDEKの結合による高次クロマチン構造への影響を解析するために、高次クロマチンサンプルとDEKの複合体について構造生物学的解析を行う。本年度はヌクレオソームが多数連なったサンプルであるポリヌクレオソームの再構成を行なった。次年度はこのポリヌクレオソームとDEKの複合体を精製し、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の研究計画に基づき、DEKとヌクレオソームの複合体についてクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析を行った。解析ソフトウェアを用いて単粒子構造解析を行った結果、DEK-ヌクレオソーム複合体の立体構造を高分解能で決定することに成功した。得られた構造からは、DEKのDNA結合ドメインがヌクレオソームのリンカーDNAと特異的に結合している様子が捉えられた。また、DEKの結合によってヌクレオソームのリンカーDNAが独特な配向をとることが明らかとなった。このDEKによって規定されるリンカーDNAの配向は、同様なヌクレオソーム結合様式をもつリンカーヒストンH1によるものとは大きく異なっており、DEKの結合によって高次クロマチン構造が変換されるメカニズムの一端を見出したと考えられる。さらに、DEK-ヌクレオソーム複合体の立体構造からDEKのヌクレオソーム結合に重要だと思われるアミノ酸残基の候補をいくつか同定し、これらのアミノ酸を変異させたDEKの精製を完了した。次年度では、これらの変異体DEKとヌクレオソームとの結合試験を行うことにより、DEKのヌクレオソーム結合に重要なアミノ酸を決定する。 また、DEKによるクロマチン構造に与える影響を解明するために、ヌクレオソームが多数連なったポリヌクレオソームとDEKの複合体サンプルを調製し、クライオ電子顕微鏡による構造解析を行う。本年度は当初の研究計画に基づき、ヌクレオソームが多数連なったサンプルとして、トリヌクレオソームおよびポリヌクレオソームの調製を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果から、DEK-ヌクレオソーム複合体の立体構造中でDEKのヌクレオソーム結合に重要だと思われるアミノ酸をいくつか選び出した。次年度では、これらのアミノ酸を変異させたDEKとヌクレオソームとの結合試験を行い、変異体DEKのヌクレオソーム結合機能を評価する。この変異体解析によってDEKのヌクレオソーム結合に必須なアミノ酸を同定する。また、DEKの結合による高次クロマチン構造への影響を明らかにするために、トリヌクレオソームまたはポリヌクレオソームとDEKの複合体を調製し、クライオ電子顕微鏡による構造解析を行う。次年度では、 DEK-ポリヌクレオソーム複合体の電顕解析サンプルの調製条件の検討、およびクライオ電子顕微鏡による撮影を試みる。得られた電顕画像から単粒子構造解析を行い、DEK-ポリヌクレオソーム複合体の立体構造を決定することで、DEKの結合による高次クロマチン構造の変化を明らかにする。本研究の成果を学会で発表して意見交換を行うとともに、論文にまとめて論文誌に投稿する。
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