2023 Fiscal Year Annual Research Report
感情的落涙の規定因及び適応的帰結に関わる統合的研究―自己観の個人差の視座から―
Project/Area Number |
22KJ0888
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 悠紀子 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 感情的落涙 / 泣き / 自己観 / 感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、感情的落涙の援助引き出し機能に関して、文化的側面から検討を行った。研究1および研究2を通して、文化的自己観(文化的慣習や価値観によって形成される自己の捉え方)の種類(相互独立的自己観/相互協調的自己観)が落涙の援助引き出し機能にどのような影響を与えるか、また、観察者と落涙者の自己観が合致するか否かにより、落涙場面の援助の促進・抑制に違いが生じるかを検討した。具体的には、以下の仮説を立てた。(仮説1)(相互協調的自己観は援助の高さと関連することから)相互協調的自己観が高い観察者は、落涙場面で、より援助意図が高まる(仮説2)落涙者と観察者の自己観が合致する落涙場面では援助が促進されるが、合致しない落涙場面では援助が抑制される。 実験では参加者に落涙のある場面とない場面(研究1:悲しみ、研究2:フラストレーション)をランダムに割り当て、場面ごとに援助意図を尋ねた。落涙の有無は、文章や顔写真で表した。研究1の結果では、相互協調的自己観が高い人は、落涙の有無に関わらず、他者に対して援助意図が高かったが、相互協調的自己観が低い人は、落涙のある場面で援助意図が高まった。また、落涙者と観察者の自己観が合致しない場合には、落涙時に援助が抑制されることも示された。 しかし、落涙の効果の小ささや他の指標との関連から、実験内容や呈示方法に問題があると考えたため、修正を加えた上で、研究1と同様の手続きで研究2を実施した。その結果、仮説1が支持されたが、相互協調的自己観が低い人では、落涙の援助引き出し機能は示されなかった。また、自己観が合致していない場面で援助が促進されるという結果が得られた。 研究1と2の結果から、落涙の援助引き出し機能は確認されたものの、落涙以外の要因が援助意図に大きく影響していることが示唆された。落涙の援助引き出し機能と他の要因との関連については、さらなる研究が必要である。
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