2023 Fiscal Year Annual Research Report
高機能な振動子ネットワークのデザイン:ロバスト性とエネルギー効率
Project/Area Number |
22KJ0899
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小澤 歩 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 振動子 / 同期現象 / 振動死 / 同期 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の振動子が相互作用などによりリズムを揃える同期現象は、単独の振動子では実現できない大きな振動を振動子集団が生み出すことを可能にする。このような巨視的な振動はシステムが正常に機能するためにしばしば不可欠である。そこで本研究は、振動子集団が巨視的な振動を効率良くロバストに生み出すような振動子間相互作用の設計方法を、位相縮約理論を活用して明らかにすることを目的としていた。 2022年度は、位相縮約理論を活用して同期解のベイスンを近似する方法について検討した。ここで同期解のベイスンとは同期状態に至る初期状態の集合であり、その大きさは、各振動子の状態をランダムに変化させる摂動に対する巨視的振動のロバスト性の良い指標になる。また、同期した振動の機能的な意義について関連分野の研究者と議論するなかで、上述の摂動とは別の種類の摂動の重要性も認識した。それは、振動子集団を構成する振動子の除去や新しい振動子の追加による振動子の入れ替わり(ターンオーバー)である。 そこで、2023年度は、ターンオーバーの存在下でも安定な巨視的振動を生み出すための条件を調べた。位相方程式を利用した数理モデリング・解析計算・数値計算の結果は、ターンオーバーが激しいときに巨視的振動を保つには振動子間相互作用を強くしすぎないことが重要であることを示唆した。さらに解析の過程で、Stochastic oscillation quenching という新しい種類の転移を見つけた。これらの結果は、生命システム等のターンオーバーが生じるシステムにおいて、システムが正常に機能するために必要な振動が消失するのを防ぐことにつながると期待される。 以上の成果は国際会議Statphys28などで発表した。また、国際誌にも投稿済であり、肯定的な査読結果を得て現在最終調整中である。
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