2023 Fiscal Year Annual Research Report
寺院と町人の経営にみる近世門前町の都市空間についての研究
Project/Area Number |
22KJ0921
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 駿介 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 門前 / 都市空間 / 経営 / 町家 / 領主 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、近世半ば以降に急速に発展した門前町の例として成田山新勝寺の門前町(門前)についての研究を進めた。ここでは近代の成田門前町の空間構成を復元した上で、新勝寺所蔵の近世の土地証文を分析することで、成田門前町の土地経営を明らかにした。成田門前町は18世紀半ばから急速に展開した町場であり、当初は境内などの新勝寺が支配する土地に町並みが形成された。こうした土地は新勝寺によって旅籠に貸出されると共に講の定宿となり、安定した土地経営をする新勝寺と、優先的な宿泊権を得る旅館との経営関係が成り立っていた。 また、本研究では門前町(門前)をその形成過程から、①近世初頭に計画される善光寺、②中世から継承される伊勢山田、③近世半ばに展開される成田の3つに分類して分析してきた。全体を通して、領主寺社と門前の住人との関係により門前町(門前)は経営され、門前の都市空間を構成する町家の建築形式は、上記の関係によりが決められ、統一された町並みになることを提示した。①②については以下の通りである。 ①善光寺門前については、検地帳の復元を通して土地の領有権や間口寸法を分析した。近世初頭に計画された大門町の旅籠は宿や市に関する特権をもち、町家の形式も瓦を葺くなどの特徴を備えた。これは中世以来の領主である善光寺大勧進・大本願とその被官に対して、近世初頭から台頭する大門町の宿場町人との関係によって起こるものであった。 ②伊勢山田については、多くの土地を所有する寺について調査を行った。そこでは近世の寺には御師や地域共同体などで構成される支配人の仕組みがあり、支配人は間接的に土地を経営していた。寺と支配人は血縁関係を持つことが多く、中世的な支配の特徴と指摘できる。こうした都市空間は寛文の大火を機に改変されたが、それまでは妻入り形式の町家と寺社が混在する町並みが展開していたと指摘した。
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Research Products
(2 results)