2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of cancer progression mechanism and development of novel therapeutic strategy focusing on cancer metabolic adaptation under acidic pH
Project/Area Number |
22KJ0927
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 啓介 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | がん代謝 / オミクス解析 / オルガネラ / 腫瘍抑制因子 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
低 pH 条件で培養した膵がん細胞株の転写産物・代謝産物のオミクス統合解析より、低 pH 特異的にアセチル化ポリアミン代謝物(N-1 アセチルスペルミジン)が細胞内に蓄積し、上流で代謝反応を律速的に制御する酵素であるアセチル基転移酵素 SAT1 の発現が 3 倍程度亢進することが明らかとなった。SAT1 の高発 現は大腸がん、前立腺がん患者などで予後不良となることが報告されている。ヒト膵がん細胞株を用いたマ ウス腫瘍移植実験では SAT1 発現抑制時に有意に腫瘍形成が抑制され、免疫染色から腫瘍組織への血管新 生や免疫細胞の浸潤が抑制されることを見出した。さらに、摘出腫瘍組織に対してセルソーティングによる イムノプロファイリングを行い、好中球が約 1/3 程度まで減少していることを見出した。また、マウス腫瘍のトランスクリプトーム解析から、SAT1 発現抑制により、Ccl2 や Il16、Cxcl12 などのサイトカインの発現 が低下することが示唆された。メタボローム解析では、SAT1 基質であるスペルミジンが蓄積し、下流の N1- アセチルスペルミジンが減少することが明らかとなった。このことから、SAT1 は上流ポリアミン代謝物で あるスペルミジン、および N-1 アセチルスペルミジンの蓄積を律速的に制御し、組織中に浸潤する腫瘍促 進性に働く血管や免疫細胞を動員しており、腫瘍形成を促進している可能性が示唆された。以上の研究成果を論文として発表している。(Maeda K et al. PNAS nexus 2023) 現在、SAT1 活性依存的な蛍光強度変化を検出するハイスループットスクリーニング系を構築中である。確立した活性評価法をもとに、東京大学内の低分子化合物ライブラリー、理化学研究所の創薬プログラムなどの共同利用施設を活用し、酵素活性阻害能を有する化合物候補を探索する。
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