2022 Fiscal Year Annual Research Report
構造材料の材料設計・プロセス最適化のための新たな逆解析手法の確立
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22J14363
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 聖史 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 材料設計 / 深層学習 / プロセス・構造・特性連関 / 分子構造最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は鉄鋼材料などの構造材料や分子構造を対象に,深層学習を用いてプロセス・構造・特製連関を,不確実性を含めて抽出・解析し得る枠組みを確立することを目的とし,深層学習ネットワークを基礎とする方法論を検討した.特に,材料構造の確率的特徴付けを中心として,連関獲得のための枠組みの構築を目指した.また,構築した枠組みの獲得する相関の物理的な意味や既知の物理的・材料的知見との親和性の観点から,材料設計・プロセス最適化への展開を検討した.以下に,本研究の与える重要な結果をいくつか示す. (1) 本研究の枠組みが,明示的な物理的メカニズムなどの問題固有の情報を直接導入することなく,材料的・物理的に説明可能な知識を獲得できるかを検討した.特に,人工二相鋼組織の強度・伸びに関する構造最適化の文脈で,破断伸びに支配的影響を与える部分構造を同定する問題を考察した.物理モデルの与える結果と比較したところ,支配的影響部の定性的な分布に関して十分な精度での一致を確認した.この結果は,本研究の与える枠組みが物理的に説明可能な知識を抽出することを示唆するものである. (2) 他の材料設計の文脈への展開として,本研究の枠組みを分子構造最適化問題へ適用した.具体的には,特定の部分構造を有する枠組みのうち,ある性能に関する最適分子を探索する文脈において,従来手法であるRecurrent Neural Network (RNN)と本研究の枠組みの一部であるPixelCNNを比較した.その結果,PixelCNN(本研究)は探索開始分子によらずロバストに探索可能である点で,従来手法よりも優位であった.さらに,探索可能領域に関しても従来手法より広く,より高性能な分子を含んでいることが確認された.以上の結果は,分子構造最適化問題における,従来手法と比較した本手法の優位性を示すものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は,基本的な枠組みの構築と検証を計画していたが,令和4年度開始時点で鉄鋼材料設計の文脈における検証に関して良好な結果を得たことから,次年度に予定していた計画を前倒しし,構築した枠組みの拡張・応用に着手した.特に,本研究が与える枠組みの獲得する知識の物理的解釈と本研究の枠組みによる分子構造最適化問題を検討した. 枠組みの獲得する知識の物理的解釈に関しては,人工二相鋼組織の強度・伸びに関する構造最適化の文脈で,破断伸びに支配的影響を与える部分構造を同定する問題を考察した.物理モデルの与える推定と十分な精度で一致したことから,本研究の獲得する知識が物理的に説明可能であることが示唆された.この結果を,査読付き国際誌であるScientific Repotsに投稿し掲載された. 分子構造最適化問題に関しては,特定の部分構造を持つ分子のうち所望の特性を最適化する分子構造探索を検討した.従来手法と本研究の比較の結果,本研究の枠組みは探索開始分子に寄らずロバストに最適構造分子が探索可能であり,その意味で従来手法よりも優位であることが示された.この結果を,査読付き国際誌であるJournal of Chemical Information and Modelingに投稿し掲載された. 以上のように,本年度中に当初予定していた研究計画の全てを遂行し,前倒しで成果を上げることができたことから,「当初の計画以上に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに構築した手法の拡張・応用及び更なる検討を計画している.また,本研究課題の最終年度に当たる来年度は,研究成果の取りまとめを行う.前年度までに,材料設計におけるプロセス・構造・特性の連関関係を不確実性も含めてデータから抽出する深層学習を基礎とする枠組みの開発が完了している.そのため本年度は,そこからの一つの発展として本研究の与える枠組みと分野に蓄積された材料的知見との親和性を議論する.特に,鉄鋼材料の相変態挙動を予測する物理モデルであるJohnson-Mehl-Avrami-Kolmogorov(JMAK)式と本研究の与える枠組みの融合を検討する.また,その検討によって得られた結果を,査読付き論文誌に投稿する. 加えて,前年度までに得られている結果と合わせて,本研究課題の与える枠組みの材料設計における位置付けを明確化し,本研究の学問的・産 業的価値を体系的に整理し,本研究課題最終年度の取りまとめとする.その結果に関しても論文投稿を予定している. 以上が,令和5年度の研究実施計画である.
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