2022 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期までの国際規制犯罪における個人の国際法上の責任
Project/Area Number |
22J14867
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北島 佑樹 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 国際刑事法 / 越境犯罪規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年増加しつつある国際刑事法に関する歴史的研究の成果を踏まえ、戦間期以前の段階において国際刑事法と呼びうるものが当時どのようなものとして理解されていたのかを、同時期の国際犯罪取締条約との関連で明らかにすることである。具体的には①先行研究の分析を進めたうえで、②19世紀後半~戦間期に成立した国際犯罪取締条約に関する一次資料の収集・分析、③同時代の学説における当時の国際犯罪取締条約の評価の分析を行う。今年度は主に①先行研究の評価②19世紀後半~戦間期に成立した国際条約に関する一次資料の収集・分析を進め、③についても②と関連する部分を中心に調査を開始した。 ①については、国際刑事裁判所が設立された現代の視点を過去に無意識に投影することで国際刑事法史の対象が狭められてすぎている、また、連続性が強調されすぎているきらいがあるとの反省が広がりつつあることを踏まえ、近年の方法論的な研究の含意および、それに基づく研究成果を整理した。 ②については、国内およびオンラインで入手可能な当時の一次史料を収集・検討した。具体的には、19世紀後半から戦間期にかけて採択あるいは発効した海上犯罪取締条約、奴隷取引取締条約、人身売買取締条約、通貨偽造取締条約、テロ取締条約などの国際犯罪に関わる24の条約(ニュルンベルク裁判憲章を定めた1945年のロンドン会議を含む)について議事録、起草委員会の報告書、電報やメモランダム等を収集・分析した。 ③については、まず検討対象の最後期であるニュルンベルク裁判の準備段階で活動したLauterpachtやKelsenらの学説を中心に検討し、検討の視座を得ることに努めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度検討を予定していた事項についてはほぼ完了した。ただし、当時の国際条約について、国内およびオンラインで入手不可能な資料があることが判明しており、来年度には必要に応じて海外での収集を行ったうえで、分析を精緻化する必要がある。また、条約起草過程を当時の文脈に照らして評価するには細心の注意が求められることから、この理解の妥当性を担保するためにはさらなる理論的検討が必要となる。この点で次年度に継続的な作業が必要となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた視点に基づいて19世紀後半の学説を検討する。学説における理解と条約の分析結果を再度突き合わせることで、当時の国際犯罪取締条約が同時代的に有していた意義を精緻化する。また、博士論文の準備を進める予定である。
|