2022 Fiscal Year Annual Research Report
占領期日本における特別教育活動成立過程の研究-教科外活動「学校内化」の観点から
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22J15192
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
猪股 大輝 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 特別教育活動 / 生徒会活動 / アメリカ進歩主義教育 / アメリカ課外活動論 / 市民性教育 / 道徳教育 / 日本教育史 / アメリカ教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、占領期日本において、今日の「特別活動」の起源である「特別教育活動」が成立する一連の過程を、子どもの教科外における自治的・主体的活動を「学校内化」する過程と捉え、この過程と学校内化の機制を分析することを目的とした。研究にあたっては、大きく①特別教育活動成立に際して重要な影響力を持ったアメリカ課外活動論の性格・内容の検討と、②アメリカの影響を加味した特別教育活動成立過程の検討の二観点を設定した。 今年度、①については、まずアメリカ課外活動論の端緒として19-20世紀転換期アメリカにおいて革新主義者ウィルソン・ギルが取り組んだ「学校市」(School City)の内容と性格を解明する研究を行い、「学校市」が子どもを学校外の生活から切り離し学校内で自治活動を行わせることで「アメリカ化」する「市民的道徳的訓練」の方法であったことを解明し、学会誌『日本の教育史学』に論文を掲載した。また、「学校市」から1930年頃までのアメリカにおける課外活動論の展開過程を、当時の教育学専門誌The School Reviewの経時的分析や課外活動論関連書籍の網羅的収集を通じて検討し、その性格を「学校内化」の観点から分析、関東教育学会第70回大会で口頭発表した。後者については現在、論文投稿を行っている。②については、広島大学が多数所蔵する占領期に実施された「教育指導者講習」(IFEL)関連記録や国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAP文書をはじめ多数の資料・文献を収集した。今後は、①の成果をもとに、②に関連する資料の分析を進め、研究目的としても設定している日本における特別教育活動の成立過程と「学校内化」の機制をより詳細に研究していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画として、1年目には観点①「特別教育活動成立に際して重要な影響力を持ったアメリカ課外活動論の性格・内容の検討」を中心に研究を遂行する予定を立てていた。新型コロナウイルス感染症流行の影響等により年度内の渡米資料調査を断念せざるを得なかったが、オープンアクセス資料や国内図書館の蔵書資料などを駆使することで「学校市」関連論文の学会誌への掲載、及びアメリカ課外活動論に関する学会報告を達成するなど、当初想定通りの進捗であった。また、観点②「アメリカの影響を加味した特別教育活動成立過程の検討」についても、広島大学や国立国会図書館等における各種資料調査が順調に進捗しており、次年度の学会発表・論文投稿等に向け準備を進めることができた。以上のことから、概ね順調に進展していると見ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き上記二観点にもとづき、研究を進める。観点①「特別教育活動成立に際して重要な影響力を持ったアメリカ課外活動論の性格・内容の検討」については、まず前年度学会口頭発表内容について、学会誌での論文掲載による公表を目指す。また、新型コロナウイルス感染症流行に起因する渡航制限が概ね解除されたことから渡米調査を実施し、更なる資料収集を行って研究の精緻化と蓄積を目指す。観点②「アメリカの影響を加味した特別教育活動成立過程の検討」については、収集済み資料の分析を進めるとともに、国内所蔵資料の更に網羅的な収集を進め、学会口頭発表・学会誌への論文投稿などを行うことで、研究成果の公表を目指す。
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Research Products
(2 results)