2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Intersectionality of Women's Military Experiences, Gender and Ethnicity in Contemporary Israel
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22J15335
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤口 右樹 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | イスラエル / 軍隊 / 女性兵士 / ジェンダー / エスニシティ / シオニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はイスラエルでのインタビュー調査や資料収集などの現地調査を行った。本研究対象のミズラヒーム女性を中心に、7名への半構造化インタビュー、5名へのインフォーマルインタビューを行った。資料収集としてはイスラエルのハガナ博物館、エツェル博物館に所蔵されている1948年イスラエル建国前後の女性民兵動員に関する各民兵集団の命令書、広報誌などの記事を収集した。 研究成果発表として、国内で3度、国外で2度発表した。2022年5月15日に第38回日本中東学会年次大会(早稲田大学戸山キャンパス開催)でイスラエル軍の女性兵士が被る二重の周縁性(ジェンダー本質主義と軍事要素の関係)と、それを両義的に解釈する背景について発表をした。6月4日には研究会「地域紛争と生存戦略」(上智大学主催、オンライン開催)にて、この周縁性と解釈が生じる要因ついて新しい解釈の余地について議論した。これらの報告を発展させ、6月27日に第38回the Association for Israel Studies年次大会(Bar Ilan University開催)で二重の周縁と女性兵士の両義的解釈が生じる要因として、「女性としての尊重」を指摘した。10月23日にイスラーム・ジェンダー学科研主催若手研究報告会(東京外国語大学本郷サテライト開催)で上記の議論をミズラヒーム女性との関係に位置付け、ジェンダーとエスニシティの交差性という観点では、「女性としての尊重」も一義的ではないことを論じた。また11月17日ベイルート若手研究者報告会(Japan Center for Middle Eastern Studies開催)でジェンダーとエスニシティの交差性を構造と主体性の再帰的な交渉過程であること示し、ミズラヒーム女性の主体性はアシュケナジーム女性とは異なる可能性が存在することを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウクライナ情勢に伴う原油価格の高騰や記録的な円安の影響を受け、イスラエルでの在外調査を大規模に行うことはできなかった。しかし、エルサレムを拠点にインタビュー調査や資料収集などを行い、研究目的達成のためのデータは十分に収集することができた。 研究成果発表の面では、国内だけでなくイスラエルやレバノンでの発表などを行い、地域の専門家からの研究についての議論、またイスラエルでの研究ネットワーキング構築、他地域の研究者からの知見や有益な助言などを数多くの成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度前半で、これまでに収集したデータを用いて、ミズラヒーム女性の主体性の意味や基準などを明らかにする。必要に応じて夏季を目安に再度現地調査を行い、上記の分析をより精緻化する。 2023年年度後半で、アシュケナジーム女性への分析結果とミズラヒーム女性の分析結果を比較し、軍隊経験におけるジェンダーとエスニシティの交差性がどのような構造の下で、女性たちが兵役から得る主体性がいかなる様相となるのかを明らかにする。 こうした主体性に関する分析結果と、イスラエルの歴史や社会構造の分析とを組み合わせ、博士論文を執筆する。
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