2023 Fiscal Year Research-status Report
思春期の子どもの精神的不調に対する座位行動の影響の解明
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22KJ0991
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松隈 誠矢 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 座位行動 / 気分 / ストレス反応性 / 精神的不調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では座位行動と精神的健康について、一時的な座位行動の変化や習慣的な座位行動の変化という時間的間隔を含め、その関連性を明らかにすることを目的としている。座位行動とは、覚醒時の横になったり座ったりして過ごす低活動な状態である。本年度では特に、その関連のメカニズムとして座位行動時間がストレスに対する感情の反応性について影響するのではないかという仮説の元、実験を行った。実験は、日常生活下での身体加速度計を用いた座位行動の時間の調査に加え、気分の状態を毎日測定し14日間の継続測定を行った。本年度はプレ調査として3名、本調査で45名のデータ収集を行なった。その解析の結果、座位行動時間が一時的に長い場合にストレスに反応し大きくポジティブ気分を損なうことや習慣的に座位行動時間が長い場合にも大きくポジティブ気分を損なうことがわかった。ポジティブ気分が低いことや、ストレスに反応して大きくポジティブ気分を損なうことは将来のうつ病発症のリスクであることがわかっており、座位行動がうつ病発症のリスク要因であるメカニズムについて1つの可能性が示された。先行研究では、習慣的な座位行動時間がうつ病発症のリスクであることが検討されてきたが、本研究の成果では、一時的に座位行動が長い日についてもストレスに対する感情反応性が高まるということがわかった。そのため、ストレスが多い日にはなるべく座位行動を短縮することでうつ病発症のリスクを低下させることができる可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、本年度は実験データの収集を中心に行い、解析において習慣的な座位行動と一時的な座位行動とに分けた場合にどのように影響が出るかを見ることを目的としていた。特に、これまでの先行研究は長い人と短い人の比較など個人間での関連を見てきているため、習慣的な座位行動の違いが影響するかのみを調査している。本研究では、14日間連続での座位行動時間の正確な測定と気分等の精神的不調に関連する要素を収集し、その個人の中で座位時間が長い日と短い日での精神的な不調との関連についても調査することを目標としていた。本年度の進捗状況としてはプレ実験3名本実験45名のデータ収集を行い、個人内の解析が可能な日数継続している対象に対して解析を行なった。その結果、座位時間の長い日と短い日での個人内の変化についても座位行動が精神的不調と関連している可能性を示した。よって、研究の進捗状況については概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、1つは介入しての効果検証が必要と考えている。特に一時的な座位行動時間の変化がストレス反応性について影響を与えるのかの検証が必要と考えており、座位時間が長い場合と短い場合でのクロスオーバー比較試験の実施を検討している。4時間程度の実験時間で座位行動時間が長い場合と短い場合を設定し、ストレスタスクを与えた後のコルチゾールや血圧・脈拍等の増加やそこからの回復状況について調査を行い、座位行動の一時的変化を起こすことでうつ病等の精神的不調の予防につながる可能性があるかを明らかにする。特に今回影響が有意に出ることがわかったポジティブ感情については、ストレス状態からの回復に影響が出ることが明らかになっている。そのため、コルチゾールや血圧・脈拍等についてストレス状態からの回復過程にどのような違いが出るのかを調査する。 もう一点の今後の研究内容として、座位行動だけでなく、運動や睡眠時間の影響を含めた日常生活での行動と精神的不調の関連を明らかにする。1日の日常生活での行動には合計すると24時間になるという制約がある。そのため、具体的にはどのような生活行動の入れ替えが起きた場合に精神的不調の予防につながるのかの検討が必要である。そのため、データの収集を継続し、入れ替えモデルや組成データとしての解析を今後行う。
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Causes of Carryover |
昨年度1年間の研究中断期間があったため、研究期間が1年延長となっており次年度で論文投稿や学会発表の予定があり、次年度使用額が生じている。
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