2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J20464
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
貝塚 啓希 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 寺院組織 / 東寺 / 院家 / 惣寺 / 供僧職 / 観智院 / 荘園 / 寺院法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は東寺の寺院組織のうち、一寺の統括組織である惣寺の成立と、院家の構成について検討し、その成果を東京大学中世史研究会、東京大学史学会大会中世史部会、東寺文書研究会にて報告した。 惣寺の成立については、鎌倉中後期から南北朝期にかけての十八口供僧を取り上げ、その奉行の制度の変遷について考察した。室町期の供僧組織においては、各組織に一年に一名の年奉行が置かれていたことが知られるが、鎌倉期・南北朝期の十八口供僧においては月ごと・季節ごとに交代する奉行が置かれ、原則として十八口供僧全員が数名ずつ結番されていた。一方で他の組織では代表者のみによる運営方針が採られており、十八口供僧は東寺寺僧にとって、特に重視される組織であった。南北朝後期の寺院法・荘園支配の画期を経て、その地位が廿一口供僧方に移り、惣寺と呼ばれる権力になると結論した。 院家の構成については、院家譲状の検討等を通じて、供僧職を重要な経済基盤としたことや、その創建に廿一口供僧方が関わったことなどを論じ、応永・永享期を境として院家と惣寺の一体性が強まったことを示した。中世東寺院家の性質として、惣寺と院家が相互依存的な関係にあったと結論した。 現在は以上の成果の論文化を順次進めている。また、東寺観智院が所有したと思われる南北朝期の『天台座主記』写本について、前半部分の翻刻と紹介を行い、東京大学日本史学研究室紀要に掲載した。後半部分は次号に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東寺の寺院組織について、院家・惣寺の両面から考察することによって、その相互の関係について一定の見通しをもつことができた。その過程では京都府立京都学・歴彩館において原本調査を含む数度の調査を行い、またその成果については、三度の研究会報告の機会を得た。また一点の史料紹介を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討課題として以下の三点が挙げられる。 第一に、寺官に関する考察である。本年度に検討した学侶の組織のもとで、寺官は文書発給をはじめとする実務を担う存在であった。また院家の組織においても彼らは院家青侍として活動していた。寺僧組織と院家の組織を架橋する寺官について検討することで、さらに多角的な見通しを持ちたい。 第二に、荘園や寺院法に視野を広げることが挙げられる。東寺領荘園や荘園制について、また他寺も含めた寺院法などについて、その成果に学びつつ、より広い視野から本研究を位置付けていくことを目指す。 第三に、戦国期東寺組織の検討がある。室町期までの寺僧組織については本年度の研究活動を経て一定の見通しを持ったが、供料荘園に立脚していた東寺組織が、戦国期にその基盤を失ってからどのように変容していくのか検討したい。 以上三点の新たな検討に並行して、本年度の成果の論文化も進めていく。
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Research Products
(4 results)