2023 Fiscal Year Research-status Report
ボウタイ型光リング共振器を用いたアクシオン暗黒物質の広帯域探査
Project/Area Number |
22KJ1071
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤本 拓希 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | アクシオン / 暗黒物質 / 光共振器 / レーザー干渉計 |
Outline of Annual Research Achievements |
【ゼロ位相差ミラーと波長可変レーザーを用いた同時共振手法のデザイン】 DANCEはボウタイ型光共振器にs偏光を蓄積し、そこからアクシオン暗黒物質との相互作用によって生じるp偏光を検出することで、アクシオン暗黒物質の探索を行う実験である。アクシオン暗黒物質を高感度で探索するためにはs偏光とp偏光が同時に共振器に共振することが必要であるが、DANCEで使用するボウタイ共振器では共振器ミラーの反射位相差によってs/p偏光が非同時共振になってしまうという問題が明らかになっている。前年度までは補助共振器をボウタイ共振器に取り付けることで同時共振を実現していたが、この手法では補助共振器内部の光学ロスや補助共振器の振動によって感度が制限されていた。そこで、反射位相差がゼロになるゼロ位相差ミラーと、位相差チューニング用の波長可変レーザーを用いて同時共振を行う新手法について、実験手法のデザインを行い、その実現可能性を示した。 【ゼロ位相差ミラーの開発】 通常のゼロ位相差ミラーは、ミラーコーティングの製造上の誤差によって数度の反射位相差が残ってしまう。そこで、レーザーの波長を変えて反射位相差をチューニングし製造上の誤差を補償できるようにするため、反射位相差に大きな波長依存性をもたせた特殊なゼロ位相差ミラーを、光学素子メーカーと協同し製作した。 【波長可変レーザーの製作と共振制御】 新しい同時共振手法で必要となる波長可変レーザーについて、ボウタイ型光共振器に共振させるための制御系の開発を行い、共振制御に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【ゼロ位相差ミラーと波長可変レーザーを用いた新しい同時共振手法への移行】 前年度の研究では、これまで開発を行ってきた補助共振器によるs/p偏光同時共振手法について予期されていなかった問題点が洗い出され、補助共振器を用いない新しい同時共振手法の必要性が示された。本年度では補助共振器の抱えていた問題を解決する新しい同時共振手法の設計と開発へ移行し、また新手法の要となるゼロ位相差ミラーと波長可変レーザーの製作が完了したため、予期せぬ問題にも柔軟に対応できた点で順調に研究が進行している。また新手法への移行に伴う問題点(共振器内部における複屈折や入射光の消光比に結合する位相雑音等)について予期・対処法の考察が進んでおり、研究計画の点でも順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、DANCE Act-1において、新しい同時共振手法の実証および感度向上を以下のように行っていく。 【ゼロ位相差ミラーと波長可変レーザーによる同時共振手法の実証】翌年度は、本年度に開発されたゼロ位相差ミラーを用いてボウタイ型光共振器を構成し、波長可変レーザーの波長をチューニングしてs/p偏光の共振周波数を揃えることによって、s/p偏光の同時共振を実証する。また同時共振が確認され次第、本年度に開発した共振制御系と組み合わせて同時共振状態の維持を行い、アクシオン暗黒物質を探索可能な状態にする。 【複屈折による雑音の評価および低減】共振器透過光の偏光回転角測定によるアクシオン暗黒物質探索では、レーザーの周波数ゆらぎが共振器内複屈折にカップルして雑音になることが予期される。そこでゼロ位相差ミラーによる複屈折およびそれに伴う雑音の評価を行う。また、共振器内複屈折としてゼロ位相差ミラーの複屈折が支配的である場合、ゼロ位相差ミラーを回転させて複屈折の軸を調整することによって雑音カップリングの低減が期待されるため、これを行う。 【より安定な共振制御系の開発】波長可変レーザーは波長を大きく変えることができるため、ゼロ位相差ミラーの位相差チューニングに使用できるという利点があるが、同時に周波数雑音が高周波数帯で固体レーザーよりも大きいというデメリットがある。そこで今年度に開発した共振制御系について、制御の位相遅れの要因を特定、除去することで、より安定な制御系を実現し、周波数雑音の低減を行う。 【アクシオン暗黒物質探索】新しい同時共振手法の実現と複屈折による雑音の低減によって、DANCE実験として最高の感度を実現した後、アクシオン暗黒物質の観測運転およびデータ解析を行う。
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Causes of Carryover |
年度末に参加を計画していた学会の出張旅費として使用する予定だったが、出張がキャンセルとなったため。 次年度でも出張旅費として使用する計画である。
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