2022 Fiscal Year Annual Research Report
標準量子限界を超える光計測に向けたパルススクイージングの極限性能の追求
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22J21611
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田口 富隆 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 量子光学 / スクイージング / 最適化 / 非線形光学 / ユニタリ変換 / 多面光波変換 / 行列最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
真空場スクイージングは量子光学における基本的な操作の一つである。この操作を長時間安定して高いパフォーマンスで行うための手法を提案し、理論的な検討を行った。数値計算に基づいて得られる信号の性質を明らかにして、結晶の位相不整合量に対して線形に変化する性質の良い誤差信号が得られることがわかった。本提案手法では、スクイージング時に実験を停止させることなく系へのフィードバックを連続的に行うことができる。研究内容は査読付き国際学会CLEO-PRに投稿して採択され、当該年度に現地にて発表を行った。
量子光学や光コンピューティングで注目を集めているユニタリ変換の構成法であるMultiplane light conversion(MPLC)法について、所望のユニタリ変換に高速に収束させるための構造及び反復的なアルゴリズムの提案をし、理論的な検討と数値計算に基づいて有用性を明らかにした。本手法は、これまで知られていた手法よりも実現するユニタリ行列の誤差を数桁オーダーで改善することができ、また収束までにかかるスピードも20倍以上高速化することができる。主研究に付随して、それまで明らかとなっていなかったユニタリ行列上のフロベニウスノルムに関するいくつかの性質を数学的に示し、この分野における公正な性能比較の基準を与えた。また、強度検出のみを用いた系に特に有用なノルムを構成した。以上の成果は、量子光学や光コンピューティングにおいて、スケーラブルで忠実度が高い計算を達成するための新たな選択肢を与える。研究内容は主著者・責任著者として論文としてまとめPhysical Review Appliedに投稿し、受理され、出版を待っている。また、査読付き国際学会CLEO-Europeに投稿し採択され、今年度発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Mltiplane light conversion(MPLC)方に基づいたユニタリ変換回路の最適化は当初の計画になかった研究テーマであるが、それまで知られていた手法に対して合成精度・速度の面で大きな利点を有する新しい手法を開発することが出来た。また、当分野で整備されていなかった数学的な基礎部分も整理することで、研究分野に大きく貢献する成果が得られた。量子光学の研究の方向性として、当初予定していた生成・測定から、その応用分野にまで射程を広げることが出来た。 非線形光学効果の位相不整合を検出する研究に関しては、国際会議に採択され発表を行い、実証を行うための実験的な検討と設計を進めた。 位相制御系に関しては、システム同定に立脚したモデルベース制御を行うための基礎的な技術準備を終えることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
ユニタリ変換回路の最適化を更に推し進め、量子力学応用にとどまらず、機械学習への応用も見据えた理論の拡張を行う。具体的には、光回路で実装されるユニタリ変換が複素数ベースの演算に対応するところを、実数行列で表される一般的な線形変換にも対応できるような手法を開発する。また、実際の応用の際に問題となるキャリブレーションを容易に行うための検討も行う。 非線形光学効果の位相不整合検出系の実験系の構築を完了し、理論の実証を行う。実際に検出された信号を実験時にフィードバックすることで、セットアップや調整が容易になることを確認する。 位相制御系にモデルベース制御手法を適用し、より高度な制御器を系に対して実装することで、さらに位相雑音が少ない系を実現する。制御器そのものだけでなく、電気回路の最適化も併せて進める。
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