2022 Fiscal Year Annual Research Report
すばるHSCによる弱重力レンズ効果測定の高次統計量を用いた精密宇宙論
Project/Area Number |
22J21612
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 貴紀 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 弱い重力レンズ効果 / 平面近似 / 宇宙の大規模構造 / パワースペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
弱重力レンズ効果の観測データは天球座標系で与えられるが、天球上の十分に小さい領域に注目する限りは、2次元平面上のデータとみなすことができる(平面近似)。平面近似を適用すると天球上の計算と比べて統計量の計算コストが少なくなり、また、計算式も簡素化できるため、本研究課題においても平面近似を採用する予定である。一方、平面近似によって測定量の値が真の値からずれてしまう恐れがあるため、平面近似の適用範囲については注意する必要がある。 そこで本研究課題の初年度では、弱重力レンズ効果の平面近似について、統計量(パワースペクトル)レベルでの精度の検証を行った。結果として、平面近似がパワースペクトルに与える影響を、平面近似を適用する領域の面積に応じて定量的に評価することができた。例えば、900平方度の正方形領域に平面近似を適用した際、平面近似がパワースペクトルに与える影響は1%以下であることが確認できた。 また、これまでの銀河の弱重力レンズ効果測定ではよく知られていなかった、任意の領域における平面近似の手法についての検証と実装を行った。天球上の極周辺や赤緯0度の領域周辺を除いた領域においては天球上の座標軸と平面場の座標軸の差異が重要になるため、単純な平面近似の式を適用するのみでは正しい統計量が得られないことを定量的に示した。その上で、座標軸の補正を考慮して平面近似を行う手法を実装し、赤緯の大きい領域でも適切に平面近似が行えることを確認した。本研究の成果は、すばるHSCによる3年度の弱重力レンズ効果の宇宙論解析においても手法の妥当性の裏付けとして用いられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究において、弱重力レンズ効果の高次統計量測定の基礎となる平面近似の手法と精度の確認ができた。本過程は正しい統計量の測定及び解釈のために重要かつ不可欠な要素であり、十分な時間と注意を払って取り組むに値する内容であったと考えるため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に取り組んだ平面近似の手法を適用することを前提として、弱重力レンズ効果の高次統計量(バイスペクトル)の定式化を行い、測定するためのコードを開発する。具体的には、銀河クラスタリングの分野で開発された、観測領域の形状の影響を受けないバイスペクトルの測定手法を弱重力レンズ効果の測定へ応用する方針をとる。開発したコードをシミュレーションデータに適用することでバイスペクトルを測定し、正しい結果が得られることを確認することで、手法の妥当性を検証する。その後、実際のスバルHyper Suprime-Camのデータを用いてバイスペクトルを測定する。
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