2023 Fiscal Year Research-status Report
すばるHSCによる弱重力レンズ効果測定の高次統計量を用いた精密宇宙論
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22KJ1079
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 貴紀 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 弱い重力レンズ効果 / 宇宙の大規模構造 / パワースペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙の大規模構造が引き起こす弱重力レンズ効果による遠方銀河像の歪みは、光では捉えることができないダークマターの分布に感度をもつため、宇宙論における強力な観測対象である。本研究では弱重力レンズ効果のフーリエ空間における3点相関関数(バイスペクトル)を測定することで従来の2点相関関数(パワースペクトル)の測定では得られなかった宇宙論的情報をデータから引き出し宇宙論パラメータを制限することを目的としている。実際の観測データでは手前にある明るい星などによってデータが得られない点があるため、単純にデータをフーリエ変換してパワースペクトルやバイスペクトルを測定すると観測領域の形状とデータが混ざり合った不正確な結果が得られてしまう。この問題を解決するために、従来のパワースペクトルの測定ではPseudo-Cl法と呼ばれる手法が用いられてきた。この手法では測定した統計量から観測領域の形状の効果を取り除くことができるが、計算量の観点からバイスペクトルへの拡張は難しいと考えられる。そこで本研究では、従来のPseudo-Cl法とは異なる、尤度関数を利用して導出できる測定手法の開発に取り組んだ。本年度は特にパワースペクトルについて当該手法の開発を行い、その精度を検証した。検証の結果、従来のPseudo-Cl法と同程度の精度でパワースペクトルが測定可能であることがわかった。さらに、開発した手法を発展させ、バイスペクトル測定パイプラインの開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宇宙の大規模構造による弱重力レンズ効果のバイスペクトル測定に直接つながるパワースペクトルの測定手法を開発し、精度の検証までを完了できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に開発と精度検証を行った弱重力レンズ効果のパワースペクトル測定手法を発展させ、バイスペクトルの測定コードの開発と精度検証を行う。十分な精度を有した測定コードが開発でき次第、すばるHyper Suprime-Camの観測データに適用し、実際の観測データからバイスペクトルの測定を行う。得られたバイスペクトルを理論モデルと比較することで宇宙論パラメータの制限を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたストレージ等の機材が現時点では必要とならず購入しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、次年度国際学会へ参加する際の旅費などに使用する計画である。
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