2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒストンアシル化触媒を用いたacidic patch binderの網羅的解析
Project/Area Number |
22KJ1113
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 多実子 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Keywords | ヒストン / 触媒 / がん / エピゲノム / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
クロマチンの主要な構成タンパク質であるヒストンのacidic patch領域は、多様なクロマチン結合タンパク質の足場であり、様々ながんにおいて突然変異が確認されるhotspotである。acidic patchとacidic patch結合タンパク質(APB)間の結合様式の崩壊は、がんにつながる可能性が示唆されており、APBを網羅的に解析することは、がんの分子メカニズム解明や新規治療法開発につながると期待される。しかし、細胞内環境でAPBを網羅的に同定する方法は存在しない。そこで本研究では、「ヒストンアシル化化学触媒システムを用いてAPBを網羅的に解析する手法の開発」を目指す。 化学触媒はリガンドによってヒストン上にリクルートされ、近傍のリジン残基を位置選択的にアシル化する。本計画では、近傍タンパク質と光架橋を形成するプローブを含むアシル基を、化学触媒によってヒストンに導入し、生細胞内でAPB網羅的に検出する。遺伝子操作を必要としない本手法が実現できれば、将来的に患者由来サンプルを解析し、がんの診断や発症メカニズム特定につながると嘱望される。当該年度は、①プローブ導入触媒システムの生細胞内への適用を目指した改良、および②ヒストンに導入したプローブとAPBの間での光架橋形成の検討を行った。 ①化学触媒システムの改良として、これまでにリガンド設計の改変により、より効率的にアシル化を導入可能な化学触媒の開発に成功していた。当該年度は、細胞膜透過性を含むリガンドの更なる最適化を行い、リガンドの生細胞への取り込みを確認した。 ②夾雑環境下でのAPB検出の検討として、化学触媒により光架橋プローブを導入したヒストンに対し、細胞抽出物を加え、触媒・UV照射依存的な光架橋形成を確認した。今後は光架橋反応の効率化を目指し光架橋プローブを最適化し、①の触媒系と組み合わせて細胞内光架橋形成を目標とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に行った、①プローブ導入触媒システムの生細胞内への適用を目指した改良、および②ヒストンに導入したプローブとAPBの間での光架橋形成の検討は本計画の実現に向けて重要な前進であった。 ①従来の化学触媒は生細胞に対して効率的に導入することができず、がん細胞を網羅的に解析することを目指す本手法の障壁となっていた。リガンド改変により、反応の効率化と、多様な細胞種に適用可能な戦略での細胞膜透過性向上が実現したことは、プローブ導入触媒システムの生細胞内への適用につながると期待される。 ②触媒によりヒストンに導入したプローブとの光架橋形成は、これまでモデルタンパク質でしか実現できていなかった。今回、細胞抽出物との光架橋形成が確認できたことは、生細胞APB網羅的解析の実現の可能性をさらに高めたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、プローブ導入触媒システムを生細胞内で確立することを目指すとともに、光架橋形成反応の更なる効率化を目指しプローブの構造最適化を行う予定である。 それらを総合して、生細胞内でのAPB解析を行い、その後、多様な細胞種についてAPB解析を行うことで、がんの新規治療標的の発見を目指すことを目標とする。
|
Causes of Carryover |
本計画で定量解析の主体としているLC-MS/MSが故障し、研究が進まなかった時期があった。加えて、次年度に、生細胞を用いた実験を行うため関連費用がかかることを想定し、物品費として使用するため繰り越させていただいた。
|