2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Process of Settlement Space Formation in Country Town Since the Modern Period
Project/Area Number |
22J22448
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 純花 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 在郷町 / 都市形成史 / 都市計画史 / 歴史的集落 / 近代化 / 地域拠点 / 生活圏 / 立地適正化計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中山間地域の農山村を後背地に抱えた在郷町を対象に、中心機能に着目した集落空間の変容と、在郷町と農山村の結びつきの変容の両者を捉えることによって、近代以降の町場としての集落空間の実態とその成立背景を明らかにするものである。これによって町場という側面から見た各在郷町の集落空間の特徴を見出し、今後の地方都市の生活拠点としての空間像への示唆を得る。 2022年度は、1)在郷町の抽出、2)近代の集落空間形成過程の解明、3)在郷町の周辺農山村との関係性の変化の分析について研究を進めた。 1)については、北陸3県の在郷町を抽出した上で、その成立過程と集落類型を分析した。さらに各在郷町の立地条件を分析し、特に研究対象として取り上げる在郷町を選定した。2)については、先行調査として1つの在郷町を選定して明治時代から1970年頃までの土地台帳や土地貸借契約証綴等の歴史資料の分析を行った。その結果、土地所有が近代以降の町の公共施設立地に影響を与えていることを明らかにした。在郷町が固有に持つ空間的特徴を分析するための着眼点が判明し、他の在郷町に調査を展開するための基礎的となる成果を得た。3)については、各在郷町周辺の農山村の旧町村史を主とする郷土文献資料を網羅的に収集した。特に1つの在郷町を取り上げ、自動車普及以前の 1960 年(昭和 35)頃までの周辺農山村の交通インフラ整備履歴に着目しながら、在郷町周辺の往来の実態を解明した。この調査によって、在郷町と周辺農山村との関係性の変容における産業と生業の重要性が明らかになり、2023年度以降の研究の着眼点を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の着眼点である、在郷町の中心機能に着目した集落空間の変容と、在郷町と農山村の結びつきの変容の両者について文献調査を進め、2023年度以降の基礎となる成果を得ることができた。一方、COVID-19感染症により、地方都市の農山村部において高齢者を対象とした対面のインタビュー調査やヒアリングを行うことが困難であった。感染症が沈静化し、インタビュー対象者の了解を得られる状況になり次第調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、以下の2つの調査を進める。 第1に、在郷町と周辺農山村の間でどのような人、物の移動が発生していたかを解明する。具体的には、1)交通インフラの整備状況と2)周辺農山村と在郷町間の移動の2点を解明する。1)については、移動・輸送形態の変化に伴うローカルな交通インフラ整備の過程を分析する。史料の少ない戦前の記録は自治体史を主とする地域資料を参照し、補完として地元の新聞や広報等の文献を分析に用いる。2)については、在郷町と周辺農山村の間でどのような人、物の移動が発生していたかを解明する。郷土資料の記述から各農山村ごとの生業等を把握した上で、どのような移動があったかを分析する。戦後の移動実態については、周辺農山村の高齢者にインタビュー調査を行うことを検討している。 第2に、近代以降の在郷町の集落構造の変容を明らかにする。事例調査対象地である富山県内で複数箇所の在郷町を選定し、地形図や住宅地図を用いて1)成立過程と集落類型、2)近代初頭の在郷町形状、3)現在に至る集落構造の変容過程を分析する。特に近代化の現れとも言える道路網の整備履歴と公共施設の立地の変遷に着目する。 第1の調査、即ち在郷町と農山村の結びつきの変容の解明に重きを置きながら、2024年度の研究を見据えた基礎的調査として第2の調査を遂行する。
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