2022 Fiscal Year Annual Research Report
特別な教育的ニーズを持つ生徒の社会的相互作用の機会を保障する通常学級の構造
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22J22503
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
緒方 亜文 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 通常学級 / 特別支援学級 / 自閉スペクトラム症 / コミュニケーション / インタビュー / 参与観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「発達障害等に由来してコミュニケーションに特性を持つ中学生に焦点を当て、授業における級友との社会的相互作用の質に影響を与える教室の構造を明らかにする」(交付申請書より)ことであった。そのために、「通常学級と特別支援学級において授業での発話や行動の記録やインタビュー調査を併用した事例研究を行う」(同上)こととなっていた。本年度の研究成果は、以下の通りである。 (1)中学校特別支援学級に在籍しつつも通常学級の授業に繰り返し参加している、自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害等の障害を持つ中学校1~3年生の7名の生徒を参加者として行った半構造化インタビューの音声データの分析が進展した。分析の経過は、日本教育心理学会第64回総会、日本特殊教育学会第60回大会において発表され、心理学や特別支援教育の観点から意見や建設的な批判を受けた。なおこれらを基に論文の執筆が繰り返し行われたが、年度内の投稿には至らなかった。 (2)中学校特別支援学級を中心として、自閉スペクトラム症(中度知的障害を伴う)の1名の生徒に焦点を当て、長期の参与観察を行った。これによってバインダー6冊ぶんのフィールドノーツやプリントの複写、100時間程度のビデオの録画・音声データが蓄積された。複数の場面を焦点とした逐語録の作成、解釈とコーディングの往還を行った。これらの分析はかなりの進展を見せたが、年度内の学会発表や投稿には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、インタビュー調査の音声データの分析が進展し、2回の学会発表を行った。また、中学校における長期の参与観察により膨大なデータ(フィールドノーツとビデオの録画・音声)を蓄積することができ、その分析が進展した。公的な成果物(雑誌論文)の発表は至らなかったものの、複数の論文の執筆に耐えうるデータが得られ、投稿に向けた分析が進展していることから、初年度としては「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
既に複数の雑誌論文の執筆に必要なデータが蓄積しているため、次年度以降はこれらの分析と投稿を精力的に進めていく。また当初予期していなかった点として、観察データの多くが特別支援学級の授業ビデオとなってしまっているが、微視的なコミュニケーションの分析によって、最終的に通常学級の授業のデザインにも示唆を与えるような議論を行うことを目指す。
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