2023 Fiscal Year Research-status Report
特別な教育的ニーズを持つ生徒の社会的相互作用の機会を保障する通常学級の構造
Project/Area Number |
22KJ1120
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
緒方 亜文 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / ディスコース分析 / 教室 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「発達障害等に由来してコミュニケーションに特性を持つ中学生に焦点を当て、授業における級友との社会的相互作用の質に影響を与える教室の構造を明らかにする」(交付申請書より)ことであった。そのために、「通常学級と特別支援学級において授業での発話や行動の記録やインタビュー調査を併用した事例研究を行う」(同上)こととなっていた。本年度の研究成果は、以下の通りである。 (1)2021年度に実施した、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害を持つ7名の生徒を対象とした半構造化インタビューの音声データの分析と、論文の執筆が行われた。この研究は、教室におけるコミュニケーションへの当事者の意味づけを明らかにしたものである。また、方法論である心理学的なディスコース分析は、我が国でも数えるほどしか先例の無い手法である。論文は、日本質的心理学会の「質的心理学研究」誌に投稿された。(2024年4月22日の時点で、採択となった。)また、同一データを用いた別の分析を行い、査読を経て、2024年度には以下の国際会議での発表が確定した: ICEAP 2025。 (2)2022年度に実施した、ASDと中度知的障害の診断を持つ1名の生徒と教師・周囲児のコミュニケーションについての観察調査のビデオ・音声データの分析と、論文の執筆が行われた。これは、教室におけるASD児のコミュニケーションへの参加に影響を与えるディスコース(談話)の構造を明らかにするものである。主に3つの現象に焦点を当てた分析の途中経過は、以下の4つの学術大会で発表された: IHSRC 2023、日本特殊教育学会第61回大会、日本質的心理学会第20回大会、EMCA研究会 2023年度 春の研究例会。ここから進展した分析は、査読を経て2024年度には以下の学術大会で発表することが確定した: IIEMCA 2025。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1つのインタビュー研究について、本年度に投稿した論文が、「質的心理学研究」誌に採択された。また、さらに進展した分析が1つの国際会議の発表に採択された。一方で、3つの観察研究については、投稿には至らなかった。ただし、これらは4つの学会発表を経て、分析と執筆が大きく進展した。また、1つの国際会議の発表に採択された。論文の執筆も進行している。そのため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、観察研究の学術誌への投稿を目指す。また、これまでの研究を包含した博士論文の執筆を開始する。特に、レビューの章と、理論的パースペクティブの章については、それぞれ学術誌あるいは学内紀要への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
購入予定であったパソコンが、思ったよりも安く購入できた。このぶんは、2024年度における国際会議への出張費に充填する予定である。
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