2022 Fiscal Year Annual Research Report
Historical Study on the Word Order of Danish: From the Perspective of Historical Syntax and Language Contact
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22J22791
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 貴也 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 近世デンマーク語 / 歴史統語論 / 語順変化 / 定動詞 / 副詞 / 従属節 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度の調査に関して、まず使用する資料の選定を改めて行なった。その上で、現代に至るまでの変化を辿る以上、最終的には全体的に資料を扱う必要があるが、まず16世紀後半~17世紀前半の公的な資料 (公文書、法律など) に特に着目することにした。理由としては、当該時期の資料について先行研究における調査が手薄であると見られたことと、その性質上最も保守的で、変化に最後まで抵抗する可能性の高いジャンルである公的資料を調査することによって、言語変化が当時どれほど深く浸透していたのかを知ることができると考えたためである。そして、それらのジャンルの資料の調査を行なった。現在、量的調査を行い、語順の出現頻度を確認しているが、より古い形式とより新しい形式が共存することが確認されている。調査対象の資料に見られる各々の従属節の詳細な質的調査も行い、記述を進めた。なお、調査が完了しているところまでの成果は、一旦まとめた上で2023年度に発表する予定である。理論面について、これまでの研究では、生成文法を用いた統語分析を主に参照していたが、デンマークでは生成文法とは異なる観点からの分析が盛んであり、そちらの方面の先行研究にも目を通し、分析方法のアップデートを図った。 なお、今年度は研究指導委託制度を利用して、大阪大学外国語学部デンマーク語科へ国内留学をおこなった。大阪大学では、デンマーク語学の専門家やデンマーク語母語話者の先生方の指導のもと、デンマーク語の基本的な語学力を増強することに主眼を置いた。勿論それだけでなく、研究面での指導もしていただき、研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、まず調査対象とする資料の選定に重点を置いた。それに従い、資料の言語学的調査を始め、今も引き続き行なっている。その点では、計画通りに進んでいる。一方で、当初、生成文法理論を基礎にした歴史統語論の手法での分析を試みていた。ゲルマン諸語の統語論研究ではこの手法が一般的であるからである。しかし、その一方で、デンマーク語の統語論研究、とりわけデンマーク国内の研究者によるデンマーク語統語論研究では、歴史的研究であっても生成文法理論とは異なる観点からの記述が行われ、その方面からの先行研究も豊富である。そこで、当初の計画とは少し異なっているが、より包括的な研究を行うためにはそちらの方面の先行研究にも目を通すことが必要不可欠であると考え、その文献調査に時間を要した。その結果として、当初予定していた資料の調査の開始が少々遅れた。以上が理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、前年度の研究を継続する形で (a) デンマーク語の語順の変遷を時代ごとに網羅的に記述し、(b) 言語接触という観点から、デンマーク語と関わりの深い言語の語順を調査し、語順変化における他言語の影響を調査する。(a) に関して、コーパスの利用や文献の精読を通じて量的側面・質的側面の両方からデンマーク語の語順について調査し、記述を行う。とりわけ、従属節語順の変化が顕著に見られるようになった16世紀以降の散文資料を中心に扱い、時代や資料のジャンル、注目すべき用例の使用されている (意味的な) 文脈等、様々な点に着目しつつ記述を進める。現在すでに進めている法律文書等の公的資料の調査・研究を継続し、目処がつき次第、話し言葉に近いジャンルの資料の調査に移っていく。また、(b) に関して、特にドイツ語の影響を調査する。中世低地ドイツ語の使用者であるハンザ商人がデンマークを含む北欧に進出し、言語接触が起こっていたと見られるのは14世紀から16世紀頃である。コーパス・文献調査を通じて、当該時期における中世低地ドイツ語の影響を調査する。また、中世低地ドイツ語が影響力を減退させた後の時代には高地ドイツ語からの影響を考慮に入れる必要があり、こちらも同様に調査を行う。当該言語の文献をデンマーク語に翻訳した資料については、翻訳元の資料と翻訳先の資料を比較することで、語順について詳しく検討する。 その上で、語順変化を分析して言語内的観点からまとめ、変化の要因として考えうる可能性をそれぞれ検討しつつ、語順変化のメカニズムを総合的に解明する。これに関して、(a), (b) の調査結果を用い、検討を開始する。
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