2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J22879
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 航平 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 接着剤 / 水中接着 / 水素結合 / 疎水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
接着剤は身の回りに数多く存在しているが、水の中で塗布から硬化まで行うことのできる接着剤の開発は非常に困難である。そこで、全プロセスを水の中で行うことのできる強力な水中接着剤の新たな分子設計指針の提案を目的とした。研究者はこれまでに強力な水中接着剤の開発に成功していた。これは光を照射することにより迅速に硬化する。そこで、なぜ水の中でくっつくのか、水中接着機構の解明に取り組んだ。チオ尿素接着剤の水素結合部位やリンカー部位の構造を変えた参照分子を複数合成した。それらを用いて、接着性能のみならず弾性率や粘弾性などの機械物性を測定し、化学構造と物性の構造物性相関を得た。また、実際にどの化学構造が水中接着に有効なのかを解明するために、電子密度汎関数による計算を行い、溶媒和エネルギー、官能基のどの部分がより水和されやすいか、さらに、接着剤とガラス基板の界面の相互作用などの情報を得た。
これまでの光照射による接着剤の硬化方法では、光を透過しない不透明な材質の接着には適さず、実用面で問題を抱えていた。そこで、光を用いずに接着可能な2液混合型の接着剤の開発にも取り組んだ。この2液混合型の接着剤は、開発した接着剤分子を架橋剤と混合することにより3次元ネットワークを構築し硬化する。硬化した接着剤は、強い接着性を示すだけでなく何ヶ月にもわたりその高い接着強度を維持することができた。この優れた接着性は実用化されているエポキシ水中接着剤をも上回った。さらに水中に加えて海水中においても、またガラスのみではなく金属、樹脂、木材など様々な材質に対してもその強い接着力を長期間にわたり維持した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた接着機構の解明に取り組み、概ね解明することができた。また、次年度に予定していた光を用いない接着システムの開発にも取り組み、当初予定していた方法ではうまくいかなかったため、別の新たな方法により、実現した。したがって、予定通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、当初3年目に予定していたオンデマンド型接着剤の開発に取り組む。その際、これまでに蓄積してきた知見を存分に生かした分子設計を行う。また、それらを国際学会や国際論文にて発表する。
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