2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of phosphorylation of alcohols in protein based on the structural modification of phosphoenolpyruvate
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22J23072
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤吉 浩平 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 触媒化学 / リン酸エステル化 / 光触媒 / タンパク質修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質のリン酸化は生命活動において必須の翻訳後修飾の一つであり、リン酸化酵素などの変異が原因となる疾患も数多く知られている。したがって、細胞内におけるタンパク質のリン酸化状態を人工化学触媒によって操作できれば、治療への応用が期待できる。 本研究では、生理条件下でのタンパク質中セリン残基選択的な触媒的リン酸モノエステル化反応の開発を目的とする。生理条件下でのタンパク質中セリン残基選択的リン酸化には、他の求核性アミノ酸残基との化学選択性と、求核力の類似した水とアルコール間の区別という課題を解決しなければならない。申請者は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)が課題解決の鍵であると考えた。PEPの動的平衡の中で最も熱力学的に安定なアルコールの修飾が優先することで化学選択性は実現可能である。また、水中で安定なPEPを触媒的にタンパク質近傍で活性化できれば、近接効果によりアルコールと水を区別できると考えられる。 まず、PEPのリン酸脱離基としてジヒドロピリジン骨格の検討を実施した。リン酸ジヒドロピリジンは酸化によりリン酸ピリジニウム種を生成しアルコールのリン酸化に至る。温和な条件での活性化を目指し、水素放出を酸化の駆動力とした光触媒、水素原子移動触媒、コバルト触媒によるハイブリッド触媒系による酸化法を設計した。本触媒系により1-ジフェニルリン酸-3,5-カルボニルエトキシ-1,4-ジヒドロピリジンを酸化し、アルコールのリン酸トリエステル化が中程度の収率で進行することを見出した。今後は、収率と官能基許容性の向上に取り組む予定である。さらに、ジヒドロピリジンを脱離基としたPEP誘導体を合成し、光触媒を連結したセリン含有モデルペプチドに対して生理条件下でのリン酸化を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PEPのリン酸脱離基としてジヒドロピリジン骨格の検討を実施した。リン酸ジヒドロピリジンは酸化によりリン酸ピリジニウム種を生成しアルコールのリン酸化に至る。生体適用反応への応用を志向した温和な酸化法として、水素放出を酸化の駆動力としたハイブリッド触媒系を設計した。 以下に、想定触媒サイクルを示す。光励起された光触媒により一電子酸化されて生じる水素原子移動触媒ラジカルがジヒドロピリジン4位の水素を引き抜く。2価のコバルト触媒による一電子酸化でリン酸ピリジニウム種を生成し、アルコールのリン酸化を進行させる。ジヒドロピリジンとアルコール由来のプロトンによる1価のコバルト触媒のプロトン化と生成したコバルトヒドリドのプロトン化により水素分子を放出する。3価のコバルト触媒により光触媒が再酸化され、触媒サイクルが完結する。 以上の反応設計を元に、単純なアルコールを基質として検討を行った。アセトニトリル中青色光照射下室温にて、1.5当量の1-ジフェニルリン酸-3,5-カルボニルエトキシ-1,4-ジヒドロピリジンと共に、10 mol%のアクリジニウム光触媒、10 mol%のチオリン酸イミド水素原子移動触媒、10 mol%のコバロキシム触媒、20 mol%のリン酸二水素ナトリウムを作用させた結果、51%の収率で目的のリン酸トリエステルが得られた。 リン酸ジヒドロピリジンの触媒的活性化によりアルコールのリン酸化は進行しているものの、有機溶媒中において収率が中程度に止まっている。また、リン酸置換基としてジヒドロピリジンを導入したPEP誘導体での反応性の確認も必要である。現在までに、PEP誘導体の有機溶媒中での反応系の確認を予定していたため、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
リン酸ジヒドロピリジンの触媒的活性化によりアルコールのリン酸化は進行しているものの、有機溶媒中ですら収率が中程度に止まっている。リン酸ジヒドロピリジン活性化における触媒系は概ね確立できたため、さらなる添加剤の検討やジヒドロピリジン骨格の改変によりリン酸化反応の収率向上を目指す。 また、リン酸置換基としてジヒドロピリジンを導入したPEP誘導体の合成と反応性の検討を行う。その後、触媒を連結したセリン含有ペプチドに対し生理条件下でのリン酸化反応の検討を行う。触媒近傍で活性化されたPEP誘導体は加水分解を受ける前にセリン水酸基と反応しなければならないため、近接効果による反応の効率をさらに増大させる必要があると予想される。水との選択性を向上するため、セリン水酸基周りに疎水場を作ることを考えている。また、ボロン酸-ノポールジオールの高い親和性を生かし、PEP誘導体にボロン酸骨格を、ペプチドにノポールジオール骨格を導入することで、ペプチド近傍のPEP誘導体濃度を擬似的に上昇させる戦略も考案している。
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