2022 Fiscal Year Annual Research Report
深層学習を用いた細胞内微細構造解析によるエネルギー産生調整機構の解明
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22J23115
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅 翔吾 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / FIB-SEM / ミトコンドリア / クリステ構造 / クリステジャンクション / セグメンテーション / 深層学習 / OPA1 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内でミトコンドリアは限られた体積の中で効率よくエネルギーを産生するために、クリステ構造と呼ばれる複雑な内膜構造を持つ。しかし、その微細かつ複雑な構造ゆえに、クリステの3次元構造を効率的に解析する手法はなかった。本研究では、独自に構築した深層学習による画像解析ワークフローを用いることで、培養細胞の3次元電顕画像から多数のミトコンドリアおよびクリステ構造の3次元再構築を非常に高効率で行い、さらに、クリステ構造とミトコンドリア内膜の結合部であるクリステジャンクションを抽出し3次元再構築することに世界で初めて成功した。また、深層学習によるハイスループット解析法を、ミトコンドリア近傍の小胞体を抽出できるように拡張し、ミトコンドリア-小胞体接触部位の3次元再構築にも成功した。また、同様の解析をミトコンドリア内膜局在タンパク質OPA1欠損細胞でも行い、OPA1欠損細胞ではミトコンドリア体積が減少し、ミトコンドリア単位面積におけるクリステの量は変わらないものの、クリステ構造が多様な形態をとることが明らかになった。この成果は、クリステ構造の多様性をミトコンドリア内膜タンパク質が制御していることを示唆しており、クリステ構造制御メカニズムの解明につながるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア近傍に存在している小胞体のハイスループットな構造解析法を確立することができた。小胞体は細胞内で多様な形態をしており、電顕画像からの深層学習を用いた抽出は極めて困難であったため、3次元的に解析された例は少ない。特に深層学習による小胞体の誤抽出の多くは、他のオルガネラとの接触場であり、修正するためには多くの労力と時間を要する。本研究で確立した構造解析法では、ミトコンドリアから数十ナノメートル以内に存在する小胞体を正確に抽出することができるようになったため、深層学習を用いた小胞体全体の構造抽出への足がかりになったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
小胞体全体やゴルジ体などの複雑な構造体に適用できる深層学習法を構築し、オルガネラ間の接触 量などを定量的に解析する。また、さまざまな栄養状態の細胞や組織細胞の連続電顕画像を取得し、クリステ構造を抽出して3次元再構築する。そして、再構築からクリステ構造に関する特徴量を抽出し、機械学習を用いたクラスタリング手法 によって各表現系間の類似性を定量的に解析する。
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