2023 Fiscal Year Research-status Report
深層学習を用いた細胞内微細構造解析によるエネルギー産生調整機構の解明
Project/Area Number |
22KJ1157
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅 翔吾 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / FIB-SEM / ミトコンドリア / クリステ構造 / セグメンテーション / 深層学習 / OPA1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアは限られた体積の中で効率的にエネルギーを産生するために、複雑な内膜構造であるクリステ構造を形成している。疾患に関連した遺伝子の変異によりクリステ構造に異常が生じることや、細胞ごとにクリステ形態が大きく異なることが示唆されていたが、その微細かつ複雑な構造ゆえにクリステの三次元構造を効率的に解析する手法はなかった。 本研究では、独自に構築した深層学習による画像解析ワークフローを用い、培養細胞の三次元連続電子顕微鏡画像から数百ものミトコンドリアおよびそれらの内部クリステ構造を超高効率的に抽出(セグメンテーション)し、三次元再構築することに世界で初めて成功した。また、同様の解析手法をミトコンドリア内膜局在タンパク質OPA1欠損細胞でも行い、正常細胞と比較することでクリステ構造の制御メカニズムを定量的に示した。さらに、さまざまな細胞種が存在している生体組織の中から解析対象の細胞種のみを抽出する、最新の深層学習セグメンテーションモデルを搭載した手作業をほぼ必要としない自動追尾型構造抽出ツールを構築した。これらのツールを用いて、マウス生体から採取した視神経内の網膜神経節細胞軸索におけるミトコンドリアおよびクリステ構造の再構築を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、生体組織の電顕画像から各細胞の領域を抽出する深層学習法は多数報告されていたが、教師データ画像内の全ての細胞領域にアノテーションをつけ、かつ推論結果を修正する必要があり、膨大な量の手作業を要していた。本年度に作成した自動追尾型構造抽出ツールは、三次元連続電顕画像の一枚の中から目的の細胞の領域を矩形で囲むだけで自動で追尾しながらセグメンテーションするため、必要最低限の労力のみで電顕画像から目的の細胞領域を抽出することができる。本ツールはさまざまな三次元電顕画像に適用できるため、生体組織の電顕画像の解析を大幅に高効率化し、あらゆる場面での応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
網膜神経節細胞軸索内ミトコンドリアのクリステ構造の複雑さを定量的に評価する解析法を構築する。そして、OPA1遺伝子に変異の入った、優性遺伝性視神経萎縮症(ADOA)モデルマウスの網膜神経節細胞軸索内ミトコンドリアのクリステ構造を解析し、OPA1変異がクリステ構造に及ぼす影響を定量的かつ網羅的に調べ、病気を引き起こすメカニズムの解明に挑む。
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Causes of Carryover |
生体の状態を可能な限り保存しつつ生体組織を電子顕微鏡観察するための固定法である、高圧凍結法による電顕サンプル作成を行うべく、共同研究先へ渡航し実験する予定であったが、台風による悪天候の影響で渡航できず、共同研究を行うことができなかった。そのため、高圧凍結法を行うための試薬・器具や生体マウスに要する予定の費用が差額となって生じた。
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