2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Gathering of People in Urban Plaza: Examining Its Complex Mechanism Composed of Spaces, Actors, and Resources
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22J23120
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桐谷 詩絵音 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 都市 / 抗議行動 / デモ / 空間 / 身体 / 広場 / 祝祭 |
Outline of Annual Research Achievements |
1960年安保闘争における国会議事堂周辺での人びとの集合の検討をおこなった。先行研究においては、関与主体が多岐に渡る安保闘争は、単一の運動というよりも異なる抗議行動の集合体だったことが指摘されており、なかでも無党無派層の闘争参加者については、参加動機としての市民的エートスが重視されてきたことを確認した。しかし無党無派層のうち中心的な人物以外の無名の参加者のデモ参加プロセスについては十分に明らかにされていないことを確認した。そこで、当時安保反対デモに参加した無党無派層の参加までの経緯やデモ経験について分析するために、当時のミニコミ誌や雑誌に寄稿された手記、雑誌・新聞記事、警察資料などを検討した。その結果から、無党無派層の安保反対デモについて、①主体、②空間、③資源に注目した以下の論点を明らかにした。この結果について、韓国および欧州での実地調査と対照しつつ、時代や空間を超えて成立する都市の集合の普遍的要素を抽出した。 ①主体:人びとははじめから明確な政治的問題意識をもってデモに参加した運動主体というより、むしろデモに参加して歩くという具体的な実践の過程のなかで、政治的権利主体としての自覚を得つつ、都市空間を占拠することの政治的意味を意識するようになったことがわかった。 ②空間:デモ行進は都市の路上において行われたが、デモ参加者ははじめは行進には参加せず沿道の歩道でためらっていた。同時に、そのように沿道で参加をためらっている見物人に対して、デモ行進の参加者は自身と同じ主体性の弱さを想像することで、道路と歩道とを越境するような連帯を感じとっていた。このように、デモ行進とは具体的な路上の空間性を前提として成立していたことがわかった。 ③資源:周囲の参加者の身体や服装のあり方から運動の連帯が想像され、プラカードなどの道具が空間的実践の継続のための拠り所となっていたことも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて研究の遂行に制約が存在したものの、文献調査や国内外への実地調査を実行することができ、研究課題の進捗をもたらすと同時に、諸学会において成果を報告することができた。 ①主体と②空間をめぐる論点については、「都市空間における身体的実践--1960年安保闘争における国会議事堂前を事例に」と題して第70回関東社会学会大会にて、また”Rethinking the Agents of Social Movement: ‘Voiceless Voices’ Formed in the 1960 Anpo Protests”と題して2022年韓国地域社会学会国際学術大会にて、さらに「デモ行進における空間と身体--1960年の東京における『六〇年安保』闘争」と題して東京大学大学院人文社会系研究科国際卓越大学院プログラム異分野共同演習ワークショップ「異文化接触・多文化共存の場としての都市空間」にて口頭発表している。 以上の発表内容は、③資源の論点と発展的に統合した上で、2023年度前半中に投稿論文として総括・発表する予定である。 1960年安保闘争の事例分析で得られた知見は、同じく2022年度中に行なった日本国内・韓国・オーストリア・ギリシャ・ドイツにおける諸都市での実地調査を受けて、時代的・地理的文脈を超えて普遍的に導出可能な都市における集合現象の理論としての位置づけを今後検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度の成果を受けて更なる事例分析を行うと同時に、成果を発表していく。 新宿西口地下広場や原宿歩行者天国など戦後東京の広場的現象について、新聞記事・ミニコミ誌・先行研究の文献調査や実地調査、当事者インタビューなどから明らかにしたのち、前年度までの知見と総合しながら理論的に洗練させていく。また、NYウォール街占拠運動等の現代の海外事例について、現地資料や海外先行研究の文献調査や実地調査、参加者インタビューなどから明らかにしつつ、日本事例と比較対照を行う。これらの検討を通して、世界的にみられる都市空間における人びとの集合がもつ社会的ダイナミズムについて、歴史的・国際的視角から先行研究群を批判的に発展させられるような研究を進展させる。 さらに研究の最終年度を視野に入れて、理論的検討についても少しずつ開始する。近年、世界的に注目されている抗議運動の空間研究やUrban Assemblage理論の検討を始めつつ、事例研究において得られた知見を用いて先行研究に対する理論的刷新を目指す。 以上で得られた研究知見については、同時進行的にまとめ発表していく。国内学術誌や学会はもちろんのこと、国外学術誌への投稿や国際学会での発表も積極的に行う。また学際的な貢献を目指すため、社会学だけでなく、都市研究や人文地理学、日本学などの分野での位置づけも意識しつつ積極的に公表していく。 経験研究・理論研究・成果発表の3つの絶え間ない往還を行う中で、我が国の都市研究の発展に資する指導的な研究者となることを目指す。
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Remarks |
東京大学社会学研究室同窓会による「クローネ賞(2021年度修士論文の部)」受賞(2022/10/22) 図書館総合展運営委員会による「図書館総合展 ONLINE plus ポスターセッション来場者投票賞1位」受賞(2022/12/28) 雑誌『クローネ会』29号に「クローネ賞修士論文の部受賞者のことば」を寄稿(2023/3/20発行)
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