2022 Fiscal Year Annual Research Report
近現代の西アフリカ・イスラーム思想史研究の構築:クルアーン解釈書の分析から
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22J00709
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
末野 孝典 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イスラーム / クルアーン解釈学 / スーフィズム / 西アフリカ / ムハンマド・ヤダーリー / アブド・アッラーフ・ブン・フーディー / イブラーヒーム・ニヤース |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「令和4年度における新型コロナウィルス感染症の影響に伴う特別研究員の採用期間の特例扱い」を受けたことにより、令和4年12月31日まで研究活動の開始時期を延長していた。そのため、令和4年度の研究開始時期が当初の予定とは大きく異なる1月から3月までという短い期間となり、研究計画の大幅な変更を行わざるを得なかった。 そのため、1月から3月までの期間は、来年度から本格的に実施するアラビア語写本調査の事前準備として、西アフリカ・イスラーム史研究の泰斗であるハンウィックが編纂した『アフリカのアラビア語文献』と近年になって整備が進みつつある西アフリカ・アラビア語写本データベースの情報を礎に、サハラ以南アフリカで活躍したイスラーム知識人らのクルアーン解釈学の著作のリストを作成し、着実に調査の準備を進めた。 また2月には、スーフィズム・聖者信仰研究会で「イブン・アラビーの言説的伝統を読み解く――イスラーム世界の西の視点から」という題名で研究発表を行った。そこでは、20世紀の西アフリカを代表するイスラーム知識人のひとりであるイブラーヒーム・ニヤースによるタフスィール著作『庭』を分析し、周縁イスラーム世界に生きる知識人たちのあいだでも、イブン・アラビー思想が受容されていることを指摘した。それに加えて、イブラーヒーム・ニヤースが『庭』において、イブン・アラビーの思想的術語群を用いてクルアーンの宇宙論を説明していることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究開始時期が当初の予定とは大きく異なる1月から3月までという短い期間となったにも拘らず、来年度に実施するアラビア語写本調査に向けて着実に準備を推し進めることができた。こうした作業を通して、調査対象となる史料の所蔵情報などを整理・蓄積した。 さらに、すでに入手しているアラビア語資料を分析し、口頭発表を行った。三か月足らずの研究実施期間において「当初の研究計画以上に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は新型コロナウイルスの感染拡大状況を注視しつつ、モロッコおよびナイジェリアでアラビア語写本調査が可能か否かを判断する。渡航が現実的ではない場合は、すでに入手しているアラビア語写本および資料の分析を可能な限り推し進める予定である。分析結果については、国内外の学会等で積極的な成果公開に努める。
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