2022 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア原虫の新規アルテミシニン強耐性株の解析と耐性遺伝子の同定
Project/Area Number |
22J12522
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
窪田 理恵 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 熱帯熱マラリア原虫 / アルテミシニン / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、既知のアルテミシン遺伝子 (Kelch13)変異をもたない、アルテミシニンに強い耐性を示す原虫(アルテミシニン強耐性株)の新規アルテミシニン耐性遺伝子の同定し、薬剤耐性原虫対策に貢献することを目的とする。 本年度、アルテミシニン強耐性株の性状解析を行った。強耐性株はアルテミシニンだけではなく、パートナードラッグにも耐性を示し、多剤耐性原虫であることを明らかとなった。この原虫のアルテミシニン耐性を示す発育期はKelch13変異をもつ耐性株と同じ発育期であったが、この原虫にKelch13変異を導入したところ、アルテミシニンの耐性が増強されなかったことから、強耐性株のアルテミシニン耐性機構はKelch13変異由来耐性機構とは異なる可能性が示唆された。加えて、強耐性株とアルテミシニン感受性株およびKelch13変異アルテミシニン耐性株の全ゲノム塩基配列を同定しSNPs解析や、発育期ごとのトランスクリプトーム解析を進めている。 マラリア原虫人工染色体によるゲノムDNAスクリーニングを用いて新規薬剤耐性遺伝子同定するために、制限酵素による限定分解したDNA断片を人工染色体プラスミドに組み込んだゲノムDNAライブラリー構築を進めている。これまでに、ゲノムDNAライブラリーを原虫に遺伝子導入することで、どのくらい多種なインサートDNA配列をもつ原虫集団を一度の実験で作成できるか(DNA被覆率)を、長鎖DNA配列解析が可能なナノポアシークエンサーを用いることで算出することができたため、必要遺伝子導入数が判明した。今後は遺伝子導入を繰り返し行い、インサートDNA配列が強耐性株全ゲノムを被覆する原虫集団を作出し、アルテミシニンによる薬剤選択し、新規アルテミシニン候補遺伝子の同定を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルテミシニン強耐性株の性状解析を行い、アルテミシニン以外にも耐性を示す多剤耐性原虫であった。この株のKelch13変異導入によって、アルテミシニン感受性が変わらなかったことから、この原虫のアルテミシニン耐性機構はKelch13変異由来耐性機構とは異なる可能性が高いことが明らかとなった。 ゲノムDNAライブラリー構築に関しては、原虫へのゲノムDNAライブラリーの一度の遺伝子導入により、どのくらいのDNA被覆率かを、計画当初はゲノムウォーキング法を使ってインサートDNA配列を同定し、算出することを予定していたが、ロングリードシークエンサーを用いることで簡単に算出することができ、遺伝子導入必要数が判明した。以上のことによりおおむねに順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
アルテミシニン強耐性株と感受性株およびKelch13変異アルテミシニン耐性株の全ゲノム塩基配列を同定しSNPs解析、発育ステージごとのトランスクリプトーム解析を行い、アルテミシニン強耐性株を特徴付ける。ゲノムDNAライブラリー構築については、インサートDNA配列が強耐性株全ゲノム23Mbを被覆するために必要な遺伝子導入数が明らかとなった。今後遺伝子導入を繰り返し、インサートDNA配列が強耐性株全ゲノムを被覆する原虫集団を作出する。構築した原虫集団に対して、アルテミシニンを処理し、アルテミシニン耐性に関連する遺伝子をもつ原虫の選択を行い、新規アルテミシニン耐性遺伝子の同定を試みる。
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Research Products
(6 results)