2022 Fiscal Year Annual Research Report
「創られた伝統」の浸透:南アフリカにおける人種隔離政策とズールー語歴史叙述
Project/Area Number |
21J01592
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
上林 朋広 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2026-03-31
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Keywords | ズールー語 / 歴史叙述 / トランスナショナル・ヒストリー / 南アフリカ / 歴史学 / アフリカ文学 / ラジオ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、20 世紀後半の南アフリカにおける人種隔離を基礎としたアフリカ人統治政策(アパルトヘイト)と同政策への抵抗運動における歴史の政治的利用を検討し、現在まで続く歴史観をめぐる対立の形成を明らかにすることである。 研究2年目にあたる2022年度は、CPDとしての主要渡航を開始し、南アフリカ各地及びイギリスで史料調査を実施した。またオンラインでの研究集会・学会、及び南アフリカ国内での学会で研究報告を行なった。史料調査実施した場所としては、南アフリカ公文書館(ピーターマリッツバーグ・プレトリア・ケープタウン)、ヴィットヴァータースラント大学、クワズールーナタール大学キリー・キャンベル図書館、及びイギリスのSOASを挙げることができる。それらの資料は、ズールー語歴史叙述に関わる資料から、ズールー語を対象とした言語学的な研究ノート、ズールー語による文学作品の原稿など多岐にわたる。本格的な史料の活用は今後の課題であるが、すでにその一部を活用して、南アフリカの所属先の研究所で報告を行なっている。今後は、収集した史料の分析を行いつつ、報告時のペーパーに加筆・修正を施し、学術誌への投稿論文として完成させる予定である。 2022年度の主要な刊行成果としては、10月に出版された『ズールー語が開く世界』を挙げることができる。同書は、一般向けの書物ではあるが、書記言語としてのズールー語の歴史を辿り、ズールー語で歴史書や小説を書くことが20世紀の南アフリカにおいて持った意味を考察しており、本研究課題に関連する成果として考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビザの取得が遅れたため、主要渡航の開始時期が遅くなったが、概ね予定通り調査を実施することができ、また調査に基づいた研究報告を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、収集した史料の分析を行いつつ、前年度に行なった研究会での報告時のペーパーに加筆・修正を施し、学術誌への投稿論文として完成させる予定である。また史料の分析に基づいて新たな学会報告を行う予定である。 また報告ペーパー及び論文執筆時にその必要性が明らかになった資料に関しては、随時収集し、分析を行なっていく予定である。
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