2023 Fiscal Year Annual Research Report
川端康成文学における舞踊と美術―大正期から昭和初期のドイツ表現主義との関連を探る
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22KJ1219
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
熊澤 真沙歩 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 川端康成 / ドイツ表現主義 / モダニズム / アヴァンギャルド / モダンダンス / バレエ / 日本舞踊 / 舞踊映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
川端が接触し影響を受けたと思われる舞踊と美術を、主に大正期から昭和初期におけるドイツ表現主義の受容状況から探る本研究のなかで、最終年度は主に舞踊の領域に絞り、モダンダンスの同時代潮流に川端がどう接触し、昭和初期の舞踊小説の系譜が生成されたかを考察した。 2023年9月の第11回東アジアと同時代日本語文学フォーラムで「川端康成『舞姫』(1951)における舞踊文化のグローバリズムと創作舞踊「仏の手」の交差性」という題目で口頭発表した。川端康成の小説『舞姫』(1950年)には、日本舞踊、モダンダンス、ストリップなどのバレエ以外の舞踊ジャンルも組み込まれているが、それらの差異や相互性は十分に論じられていない。欧米圏との盛んな交流が生んだ1920年代から30年代の新しい舞踊文化をたどる占領期のテクストとして川端康成の長編『舞姫』の事実と虚構の間隙に踏み込んだ。多岐にわたるアヴァンギャルド潮流のなかで特にマリー・ヴィグマンが推進した〈ドイツ表現主義〉の流れを汲むモダニズムの群舞に影響を受けた江口隆哉・宮操子によるモダンダンス『プロメテの火』と、小説『舞姫』の呼応を重視した。 また、仁平政人・原善編『〈転生〉する 川端康成Ⅱ アダプテーションの諸相』(文学通信, 2024,4刊行)に項目執筆し、川端原作の舞踊映画「舞姫の暦」(1935)、「舞姫」(1951)のアダプテーション研究として国立映画アーカイブへ資料調査を行い、文学、映画、舞踊などの諸ジャンルを横断する川端の多面的な表現領域を検討した。 また、さらに本年度の研究成果は2024年6月に開催される日本比較文学会第86回全国大会国際活動委員会発案オープンワークショップ「アジアにおける複数の東洋――拡張・共鳴・衝突」にて「モダンダンスの東アジアでの流行と川端康成の舞踊小説群」という題目でパネル発表することが決まっている。
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