2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J00511
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
間枝 遼太郎 東京学芸大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 住吉大社神代記 / 先代旧事本紀 / 諏方大明神画詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度に実施した研究の主な成果は以下の通りである。 【1】平安時代頃の仮託書ともされる住吉大社の古縁起『住吉大社神代記』はその本文の前半部分が『日本書紀』の本文を利用した記事となっているが、「書紀の文の衒学的な無計画な転載」と評されるなど、先行研究ではその『日本書紀』利用部分は見るべきものがない箇所として軽視される傾向にあった。それに対し、『日本書紀』を引き写した際の不手際の代表例として先行研究で断じられた箇所について従来の読みが誤っていたことを明らかにし、それが実は不手際などではなく『神代記』の中で特に重要な意味を持つ箇所であったことを指摘、『神代記』前半部が描く神話の解釈がそれによって大きく更新されることを論じた(この成果は『上代文学』第129号にて公表した)。 【2】諏訪信仰の代表的縁起書『諏方大明神画詞』の中世から近代に至るまでの受容史を、『画詞』の冒頭に『先代旧事本紀』からの引用として記される国譲り神話がその後諏訪地方においてどのように利用されたか、あるいはされなかったかという点に主に着目しながら論じた(この成果は『国語国文研究』第160号にて公表した)。また、先行研究で十分な検討が行われてこなかった諏訪信仰の縁起書『諏訪神道縁起』について、成立年代やその位置付けなどに関する基礎的考察を加え、研究の俎上に載せることを試みた(この成果は『伝承文学研究』第71号にて公表した)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮託書(あるいは仮託の可能性がある文献)については、特に『住吉大社神代記』の研究が大きく進展した。ここまでに得られた知見によって、『住吉大社神代記』という最古級の『日本書紀』利用文献の性格や受容の様相がさらに明らかになっていくことが見込まれる。また、『先代旧事本紀』の受容についても研究を進め、論文を公表することができた。『先代旧事本紀大成経』については論文の刊行にはまだ至っていないが、投稿・執筆は順調に進んでおり、複数の論文の発表の用意がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、令和4年度に実施した『住吉大社神代記』『先代旧事本紀』『先代旧事本紀大成経』についての研究を基盤として、それを発展させる形で論文を執筆することを計画している。また、全国各地における近世の神典や神代文字文献の資料調査も引き続き進め、成果を随時論文として公表する予定である。
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