2021 Fiscal Year Annual Research Report
光重合誘起分子拡散による配向表面構造の創製と動的機能の創出
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21J22737
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
橋本 彩有里 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 液晶 / 高分子 / 分子配向 / 表面形状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,独自に発見したマイクロメートルオーダーの配向凹構造について,熱印加により生じる液晶分子の異方的な収縮・膨張を利用した光学機能や蒸散機能付与を単一のフィルムで実現することを目的としている。初年度に当たる本年度は,主にストライプ光照射により形成した表面凹構造の形成メカニズムを詳細に調べた。 異方性を有する液晶分子および少量の架橋剤,光重合開始剤の混合物である試料をガラスセルに封入後,ストライプ状の光を用いて重合を行うことで,直線状の凹構造(溝)やドロップレット状の窪みが連結した凹構造(穴)が形成した。パターン光照射装置を組み込んだ偏光顕微鏡を用いて,表面凹構造の形成過程をリアルタイムで観察し画像解析を行った結果,光重合過程において,暗部中央で液晶相が発現する直前に凹構造が形成することがわかった。さらに,ストライプ状のパターン光にとどまらず,円状のパターン光を用いた場合でもパターン光の形状に沿って溝や穴が形成した。これらの結果は,パターン光重合により生じるポリマーとモノマーの濃度勾配に基づき異方的な分子拡散が誘起されることで,表面凹構造が形成することを示唆している。加えてこの結果は,パターン光を設計することで表面凹構造の形成方向が制御できることを明確に示す結果であり,極めて意義深い。本年度の研究を通じて,パターン光重合が誘起するポリマー濃度勾配が表面凹構造形成に重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的である「分子配向を併せ持った表面凹構造フィルムの力学的動きの誘起および光学・蒸散機能評価」を達成するため,初年度は主に表面凹構造の形成過程のリアルタイム観察,画像解析によるメカニズム考察および円状のパターン光照射による表面凹構造のパターニングの3点について研究を行った。いずれについても実績概要に記載した通り,研究計画に従って実施し,興味深い結果が得られた。また,得られた成果を,国際学会3件(口頭: 1件,ポスター: 2件),国内学会3件(口頭: 2件,ポスター: 1件)において筆頭著者として発表したとともに,現在学術論文投稿の準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は表面凹構造の形成メカニズム解明に向けた動画観察および画像解析により詳細な検討を行い,パターン光重合が誘起するポリマー濃度勾配が凹構造形成において重要であることを明らかにした。次年度はこれらの知見を活かし,貫通孔形成に向けた重合条件の策定を進めるほか,配向凹構造フィルムの熱応答挙動を解析するために以下の二点について検討する。 1. 凹構造を有するフィルムへのレーザー光入射時に生じる熱印加前後の回折挙動の変化をCCDカメラおよび画像解析を用いて解析し,熱応答挙動を定量的に評価する。 2. レーザー顕微鏡観察により熱印加前後の凹構造のサイズや形状の変化を直接観察する。
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Research Products
(6 results)