2022 Fiscal Year Annual Research Report
DNA機能性流体の液滴生成と集積化のための統合型マイクロ流路の開発
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22J00940
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鵜殿 寛岳 東京工業大学, 情報理工学院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | DNAナノテクノロジー / 液液相分離 / マイクロ流体デバイス / 人工細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1つ目は、従来から取り組んでいる光制御DNA液滴の論文投稿である。DNAに挿入した光異性体化合物アゾベンゼンが、光の波長に応じてDNA相補鎖同士を結合・分離させることが知られている。研究員は、アゾベンゼンを、DNA液滴を構成する粘着末端に挿入することで、液滴の相変化を光制御できることを示していた。この成果を、国際的な評価が高い一般誌に投稿し、約半年にわたる長期の査読の後、修正投稿可の決定を得た。2つ目は、この光制御DNA液滴が連続的な可視光の照射のもとで自発的な運動・変形・分裂をする挙動の研究である。研究員が偶然発見したこの現象により、生物由来のモータータンパク質を使用した従来のアクティブ流体とは異なり、完全に人工合成されたDNAとアゾベンゼンだけで、生命のような振る舞いを再現できる可能性が示された。物理的なメカニズムを含めてまだ解明すべき点が多い。令和4年度において、研究員は、波長依存性、配列依存性、アゾベンゼン挿入位置依存性など網羅的に調べた。3つ目は、DNA液滴に関する総説の執筆である。研究員が取り組んでいる光制御DNA液滴の土台となるDNA液滴は、近年特にさかんに研究が行われている。研究員は、先行研究をまとめるだけでなく、今後の課題、広い視野での今後の研究の方向性などを議論して、生物学、生物工学に関する国際的な専門誌に投稿し、掲載決定の判断を得た。総説はエディターより高評価を得て、雑誌の表紙を飾った。4つ目は、水水系の液滴を生成するマイクロ流路の作製である。研究員が着目した液滴生成手法は、流路のジオメトリが急激に変化するように設計する必要があり、2段階でマスク露光をする必要があった。SU8を用いてこの2段階露光の試作を提携先の研究室の設備を用いて行った。精度に問題があったものの、流路デザインの工夫をする上で有用な指針を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
投稿論文の査読期間が半年近くかかり,予想より大幅に遅れたため,予定していた研究スケジュールの見直しを迫られた.また,DNA液滴の自発的な運動を偶然に発見したため,こちらの研究を急遽すすめることになった.
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Strategy for Future Research Activity |
修正決定を受けた論文の修正投稿に全力を尽くす.エディターが指定した追加実験を完了させる.DNA液滴の自発的な運動に関する物理的なメカニズムを詳細に調べる.競合するグループが同じ現象を発見する可能性があるため,優先的に取り組む.マイクロ流体デバイスの開発については,二重露光の精度に大きな課題があることが判明したため,申請書に記載した研究計画の修正・見直しも含めて,引き続き開発を行う.
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